国境を超えアジアに広がる〝推し活〟 「羽生結弦」と「MIRROR」驚異の市場 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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国境を超えアジアに広がる〝推し活〟 「羽生結弦」と「MIRROR」驚異の市場

2021年12月に熊猫堂 ProducePandasの日本アルバムデビューに合わせてタワーレコードに作られた特設ブース

 

■中国発の男性ユニット「熊猫堂(ProducePandas)」は日本進出しブレイク狙う

  習近平政権の発足後、テレビや芸能活動にも政府の規制が厳しくなっている中国だが、2020 年にデビューした男性ユニット「熊猫堂(ProducePandas)」が注目を集めている。オーディションで選ばれた5人のメンバーは14カ月のレッスンを経て、2020年に配信シングル「辣辣辣(la-la-la)」でデビュー。TikTokなどでの再生回数も数千万回を記録する。さらには2021年春に中国のアイドルオーディション番組「青春有你3(Youth With You Season3)」にメンバー5人が出演。これで一般の視聴者からも注目を浴びる。

 彼らのファンは彼らのユニット名の「プロデュース パンダ」にちなみ、「パンダ飼育員」と呼ばれる。また彼らはデビューから中華圏はもちろんYouTubeでの配信でも日本語字幕を付けるなど日本でのファン獲得を目指している。202112月には日本デビューアルバム『emo』、20228月には日本1stシングル「COSMIC ANTHEM / 手紙」をリリースし日本デビューを果たした。現在までに3曲の日本語での新曲を発表するなど、巨大な中国でのマーケット以外に、日本進出も意識している珍しいグループである。

 彼らはデビューから中国で数億人を超える利用者がいるTikTokやウェイボーはもちろん、中国のタレントでは珍しくYouTubeやインスタグラムなどの海外のSNSを上手く利用し、日本など海外のファンを増やしてきた。パンダ飼育員と呼ばれる彼らのファンは、彼らの活動をSNSでリアルタイムで追っかけ、イベントに足を運び彼らの人気を支えている。

 

「C-POP」人気男性アイドルグループ「熊猫堂 ProducePandas」が日本1st CDシングルをリリース

 

 202112月の東京・タワーレコードで開催された彼らの日本デビューにも参加している40代の男性ファンは次のように語った。「彼らの日本でのデビューイベントやファンのオフ会に参加したり、YouTubeやTikTokBillBillや微博(ウェイボー)で彼らの動向や音楽映像などをチェックしてます。彼らにハマったきっかけは、ここ数年のコロナ禍でなんとなく世の中が元気ない時に熊猫堂を知って元気をもらえたということですね。5人のメンバーは皆それぞれ個性的で大好きなんですよ」。

 また熊猫堂のファンにとって嬉しいのは、中国ではもちろん日本でもネットショップでは彼らのCDはもちろん、マグカップやクッションカバーなどの公式グッズを販売しているという。中国国内のネットショップはアリペイなど独自の決裁システムで日本のファンには購入のハードルが高いが、日本国内で彼らのグッズを買うことができるのは推し活ファンにはたまらないらしい。

「中国やアジアのファンが日本で販売されているグッズを購入するという現象も起きています。この売り上げも大きいのでないかと思いますね」(前述ファン)

 推し活は彼らの歌を見て楽しむ以外に、ファンのライフスタイルにも影響を与えている。

「ディープなファンだと彼らのファッションを真似する人もたくさんいますね。彼らがYouTube配信のロケで火鍋を食べているのを見れば、同じようにファン同士で誘い合って、最近流行りの『ガチ中華』の店に火鍋を食べに行く。彼らの歌をもっと理解しようと中国語の勉強を始めるファンもいます。熊猫堂のファンになって生活まで彼らの影響を受けている人も多いですね」

 中国もゼロコロナ政策を撤廃し、外国人の中国への入国制限も徐々に解除されると予想される。日本で日本語の曲を発表している熊猫堂が今後日本にやってきてライブを開催する可能性も高い。

「ファンの間では熊猫堂の活動の中心である北京はもちろん、彼らのMVが撮影された場所などを巡る聖地巡礼ツアーをしよう、というファンが多くいます」

 コロナ禍の中で皆に元気を与え続けた熊猫堂とそれを支える「パンダ飼育員」と呼ばれるファンたち。今後、さらに彼らのような中華圏という枠を超えて、日本やアジアの国々にまで人気が拡がるタレントが登場し、「推し活」をするファンも増えて盛り上がる。そんな国境を越えた「推し活ブーム」が広がるのか要注目である。

 

秋葉原で行われた熊猫堂のファンイベントではグッズも充実していた

 

文:初田宗久

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初田宗久

はつた むねひさ

香港在住のジャーナリスト

ジャーナリスト、編集者。早稲田大学卒業後、出版社で情報誌から学術系書籍まで20年間編集業務に従事。その後、香港、台湾、中国に渡り、現地で中国語を徹底的に学ぶ。中華圏の様々なニュースから日本の労働問題や芸能事情まで精通し、多くの記事を投稿し注目されている。著者に『ブラック企業やめて上海で暮らしてみました』(扶桑社)、『「中国人の9割が日本人が嫌い」の真実』(トランスワールドジャパン)などがある。香港在住。

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