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全体主義が進行中。わが国に残されている時間はわずかである【適菜収】

【隔週連載】だから何度も言ったのに 第16回

4月26日。日本維新の会と国民民主党が参院選の一部選挙区で協力するためにかわした合意文書に対して、国民・玉木雄一郎が再協議を求めているがどう考えているか、と聞かれた松井一郎は「もうええわって言うて来て、玉木さんに。あほらしくて付き合ってられへん」「絶対裏切るよ、そんな人。損得しか考えてない」と激怒した。

 

「浅草キッド」の水道橋博士が、大阪市長の松井一郎から訴えられたことを明かした。

 水道橋博士は「異常事態だと思います」「少なくとも僕が紹介したユーチューブのユーチューバーそのものを訴えることもなく、ユーチューブの内容を訴えることもなく、ユーチューブの中で触れられている松井一郎市長の裏口入学ですね。裏口入学に関して10年前報じた週刊文春を訴えることなく、ただただ僕を訴えるということで」「僕は権力者に対する言論封殺に対して徹底的に抗議すると同時に、めちゃくちゃにからかっていきたい」と語った。

    *

 このスラップ訴訟については、私も記事に書いたことがある。

《松井の「闇」を紹介したネット番組を浅草キッドの水道橋博士がツイートすると、松井は「法的手続きします」「リツイートされた方も同様に対応致します」と激高。すでに4000件ほどリツイートされているが、松井は全員訴えるのか。それともいつもどおりの口からデマカセの恫喝か。この一連の過程で「民間人からこのように言われて裁判を起こすくらいなら政治家なんか辞めろ。税金の無駄遣いだ」「人を散々バカにする輩に限って、自分が馬鹿にされたと言ってすぐに名誉棄損と騒ぐんですよ」といった橋下の過去のツイートが注目されたのも面白かった》(「日刊ゲンダイ」226日)

 全体主義は過去の亡霊ではない。近代大衆社会に付随する、まさに「目の前にある問題」なのである。

 

■わが国に残されている時間はわずかである

 

 全体主義社会では嘘やデマが拡散されていく。なにが真実かわからない状況下においてプロパガンダは最大の成果をあげる。

《虚偽答弁118回の安倍元首相ならとっくに政界追放!「うそ」へ厳しさ日英議会で雲泥の差》という記事があった。イギリスの首相官邸で新型コロナウイルスの規制中にパーティーが繰り返されていた問題で、同国下院は、ジョンソン首相が議会に対して故意に嘘をついたとして、調査する動議を承認したそうな。

 この件に関して、記事は次のように述べる。

《国会で繰り返し虚偽答弁していたといえば安倍元首相だろう。「桜を見る会」前夜祭の問題だけで実に118回も虚偽答弁していた──と衆院事務局に「認定」されている。英国であれば、とっくに政界を追放されているに違いない》

 文字数の都合もあるし、本文では正確に述べられているものの、見出しは正確にしたほうがいい。SNSなどでも118回という数字が一人歩きしているが、これはあくまでも「桜を見る会」前夜祭に関して201911月~203月の間に安倍が国会でついた嘘の数にすぎない。要するに、118回という数字は安倍が国会で垂れ流した膨大な数の嘘、デマのごく一部。氷山の一角である。

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安倍晋三の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会を巡り、2020年12月に政治資金規正法違反罪で罰金100万円の略式命令を受けた配川博之元公設第1秘書の刑事確定記録が、東京新聞の請求により開示された。配川は、費用を補塡すれば違法な「寄付」になりかねず、「後援会の収支報告書に載せることはできない」と2013年当初から認識。秘書同士で責任を押し付け合った結果、収支報告書に記載しないまま放置していた。

 

 つい先日も安倍は中国公船が尖閣諸島周辺への領海侵入を繰り返していることに関し、「習近平国家主席と会談するたびに尖閣を守り抜くという日本の覚悟を見誤らないでもらいたいと言ってきた」と発言。過去の記録を調べたが、少なくとも「会談するたび」というのは明確な嘘である。

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 国際社会における日本に対する信頼が危うくなってきたのも、長期にわたる安倍政権の「成果」だろう。安倍とその周辺は官邸に権力を集中させ、官僚の人事を掌握し、権力の私物化、人治国家化を進めてた。これはまさに全体主義にかかわる問題である。

 元外務次官の竹内行夫は、ロシアとの北方領土交渉を巡り、安倍が「2島先行返還」にかじを切ったことについて「日本政府と国民に残された『負の遺産』」「国家主権を自ら放棄した歴史上初めての宰相(になりうる)」と批判。

 ウォール街の証券取引所で「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」と言い放った安倍にとっては、「国家主権」などどうでもいいものなのだろう。

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 わが国においては、構造改革を唱える勢力が国家の中枢に食い込んできた。グローバル企業にとっては、国家の論理は障壁でしかない。極端な格差が発生しても、道徳や「公共」という概念には関知しない。よって、グローバル企業や財界の下請けである安倍や維新のような不道徳な連中が「公共」を破壊してきたのは、当然の論理的帰結ということになる。

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 維新共同代表の馬場伸幸は、将来の政権交代を目指す方針について「自民党と連立を組むことは考えていない。あくまで目標は単独で政権を取ることだ」「(憲法改正について)一日も早く一度、国民投票はすべきだ」「直接民主主義を国民に体験していただくことが、日本の民主主義を成長させる大きなエンジンになる」と発言。

 直接民主主義がいいなら、維新という政党もいらないという話になる。まあ、たしかに「いらない」のだが、少しは歴史に学んだらどうか?

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 わが国に残されている時間はわずかである。 

 

文:適菜収

次のページ長期にわたった安倍政権による「負の遺産」

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志・中野信子との共著『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』(文春新書)、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、清水忠史との共著『日本共産党政権奪取の条件』(KKベストセラーズ)など著書40冊以上。購読者参加型メルマガ「適菜収のメールマガジン」も始動。https://foomii.com/00171


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