国際社会や日本人はタリバン政権といかに対峙すべきか?【レシャード・カレッド×中田考】第3回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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国際社会や日本人はタリバン政権といかに対峙すべきか?【レシャード・カレッド×中田考】第3回

「タリバン復権の真実」と「今、アフガンで生きる民間人の実情」を知りたい。


2021年8月15日、タリバンがアフガニスタンを制圧。「タリバンの恐怖政治が復活する」「タリバンは女性の権利は認めない」「米国の協力者は粛清する」等、それ以降も西側メディアは「タリバン=悪」説のプロパガンダに終始し、国際社会との協調を阻んでいる。一方、アフガニスタンでは今、食糧不足によって多くの子どもたちの餓死が出始めていること、また医療設備や医薬品の不足で国民の生活はさらに危機に瀕しているといった報道はあまりに少ない。米国はもちろん、国際社会は今、窮状に喘ぐアフガニスタンを放置し続けているのが実情だ。イスラーム学の第一人者である中田考氏が新刊『タリバン 復権の真実』(KKベストセラーズ)を上梓。タリバンによるアフガン制圧の真相からタリバンの組織や思想までが、初めて詳細に語られている。今回、アフガニスタンのカンダハールで医療と教育の支援をしているレシャード・カレッド医師に、中田考氏がインタビュー。タリバンのアフガン制圧後の知られざる実情と、日本人へ向けたメッセージを読者のみなさんにはぜひ聞いていただきたい。 第3回(最終回)を公開。 


アフガニスタンの首都カブールを制圧後のタリバン兵士と神学生(2021年8月18日)

■そもそも「タリバン」とは何か

 

中田:日本人にとっては、「そもそもタリバンとは何か?」ということが一番分からないと思うんです。

 まず前提として、「ターリブ」というのが元々の語源ですよね。これは「イスラムの勉強する学生たち」のことであって、元々は私もイスラムの研究者ですからその一人であったわけです。

 ということはよく分かるんですけれども、今「タリバン」と呼ばれる人々は、それとはまた別なものですよね。

 先ず、アフガニスタンの社会の中で、元々の意味のイスラームの勉強をした学生という意味での「タリバン」とはどういう人たちなのでしょうか?

 先生はカンダハールの出身ですが、カンダハールには子供が多いですよね。そもそもイスラム世界はどこでも子供が多い。世界的には子供が減っていますけど、イスラム世界は子供が多いんです。

 子供が多ければ、何人かはモスクに通って教育を受け、ウラマー(イスラームの伝統的諸学を修得した人々)になっていきますから、そういう人たちは社会の中に溶け込んでいるわけです。

 カンダハールの場合は、普通の人たちは、「ターリブ」と言われる学生さんたち、あるいはマウラヴィーとかムッラーと呼ばれる人たちと、日常的にどのような接触があるのでしょうか? 例えば学校、あるいはお葬式や結婚式といったところに呼ばれたりするものなんでしょうか?

 

レシャード:まず私の小さい時の話をさせてもらいますと、ターリブとかムッラーとかマウラヴィーというのは、その地域にいなくてはならない存在でした。地域には必ずモスクがあって、1日に5回お祈りに行きます。お祈りを司るのはムッラーです。ムッラーのところに宗教を学ぶ学生がいてそれがターリブということですね。

 個人的なことを言うと、私のおじが大変偉いマウラヴィーで、実はタリバンの総理大臣のムハンマド・アフンド師が彼の生徒、ターリブだったんです。私も彼に会ったことがあります。

 

中田:ああ、そうなんですか。

 

レシャード:そういうシステムが存在していました。いわゆる学校にも行っていますが、それと同時に学校が終わったらモスクに集まって宗教の勉強をする。日本の塾と同じシステムがあったわけです。

 学校の放課後に行く塾では、学校の勉強ではなくて宗教の勉強をするわけですよ。普通の教科書ではなくて、コーランとかハディース(ムハンマドの言行録)の勉強を塾でやるんです。

 

中田:塾のイメージなんですね。

 

レシャード:そうです。塾をモスクでやるんですね。私塾としてやる時もあれば、どこかの村でやることもある。マウラヴィーがレッスンを開く塾をやるシステムがあるんです。それは珍しいことでもなんでもなくて、当たり前の日常でした。

 実は私自身も、小学生の時にはその塾に通って、結構勉強しておりました。大変面白いことに、宗教の本だけではなく、哲学などいろんなことを勉強するのです。私はあるマウラヴィーに哲学を教えてもらって、あまりにもそういう学問に興味があるから、「お前、そういう仕事をやったらどうか」と言われたくらいです。そのようにいろいろ勉強するのが当たり前のことなのです。

 

マドラサの勉強風景。

 

中田:なるほど。

 

レシャード:今現在もアフガニスタン、特にカンダハールは宗教が浸透しているし、モスクもムッラーが中心になって存在しています。但し現在は、宗教的な塾のシステムというのは昔ほどは多くはないと思います。

 今でもマウラヴィーもムッラーも存在していますから、金曜日の礼拝の前には、多くの人が彼らに教えを仰いでいます。いろんなことを聞いて、礼拝が終わったら、知っている人も知らない人もみんな肩を並べたり、抱っこしたり、あいさつをしたりして、別れる。これが風習なんですね。

  

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◉中田考『タリバン 復権の真実』出版記念&アフガン人道支援チャリティ講演会

日時:2021年11月6日 (土) 18:00 - 19:30

場所:「隣町珈琲」 品川区中延3丁目8−7 サンハイツ中延 B1

◆なぜタリバンはアフガンを制圧できたか?
◆タリバンは本当に恐怖政治なのか?
◆女性の権利は認められないのか?
◆日本はタリバンといかに関わるべきか?
イスラーム学の第一人者にして、タリバンと親交が深い中田考先生が講演し解説します。
中田先生の講演後、文筆家の平川克美氏との貴重な対談も予定しております。

    参加費:2,000円 
    ※当日別売で新刊『タリバン 復権の真実』(990円)を発売(サイン会あり)

    ◉お申込は以下のPeatixサイトから↓

    ★内田樹氏、橋爪大三郎氏、高橋和夫氏も絶賛!推薦の書
    『タリバン 復権の真実』

    《内田樹氏 推薦》
    「中田先生の論考は、現場にいた人しか書けない生々しいリアリティーと、千年単位で歴史を望見する智者の涼しい叡智を共に含んでいる。」

    《橋爪大三郎氏 推薦》
    「西側メディアに惑わされるな! 中田先生だけが伝える真実!!」

    《高橋和夫氏 推薦》
    「タリバンについて1冊だけ読むなら、この本だ!」

     

    ※イベントの売上げは全額、アフガニスタンの人道支援のチャリティとして、アフガニスタン支援団体「カレーズの会」に寄付いたします。

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    中田 考

    なかた こう

    イスラーム法学者

    中田考(なかた・こう)
    イスラーム法学者。1960年生まれ。同志社大学客員教授。一神教学際研究センター客員フェロー。83年イスラーム入信。ムスリム名ハサン。灘中学校、灘高等学校卒。早稲田大学政治経済学部中退。東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。カイロ大学大学院哲学科博士課程修了(哲学博士)。クルアーン釈義免状取得、ハナフィー派法学修学免状取得、在サウジアラビア日本国大使館専門調査員、山口大学教育学部助教授、同志社大学神学部教授、日本ムスリム協会理事などを歴任。現在、都内要町のイベントバー「エデン」にて若者の人生相談や最新中東事情、さらには萌え系オタク文学などを講義し、20代の学生から迷える中高年層まで絶大なる支持を得ている。著書に『イスラームの論理』、『イスラーム 生と死と聖戦』、『帝国の復興と啓蒙の未来』、『増補新版 イスラーム法とは何か?』、みんなちがって、みんなダメ 身の程を知る劇薬人生論、『13歳からの世界制服』、『俺の妹がカリフなわけがない!』、『ハサン中田考のマンガでわかるイスラーム入門』など多数。近著の、橋爪大三郎氏との共著『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)がAmazon(中国エリア)売れ筋ランキング第1位(2021.9.20現在)である。

     

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