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75年前の今日、戦艦「大和」轟沈す【特攻当日】1945年4月7日

戦艦「大和」轟沈 75年目の真実⑦

■巨大な戦艦がぐらぐら沈む。戦闘中の記憶を正確に残すことなど困難である

 防空指揮所で艦長を補佐し、見張り員の指揮をとる渡辺志郎見張長は、「敵機の攻撃はまるでジョウゴの周りから中心にめがけグルグル水が流れ込むように襲ってきた」と表現している。

 塚本艦長伝令はこの状況を「機銃掃射。魚雷。あそこに来て命中、ここに来て命中、わからないくらい。始終ぐらぐら、ドカァーン、ドアンという感じ、15から20本、水柱となって飛び散る。巨大な船体がぐらぐら沈んでいく感じ」であったと回想している。 軍艦大和戦闘詳報が記録する

13時34分、左50度2000メートルに雷跡六を認める。
●13時37分、左舷中部に魚雷3命中、副舵取り舵を取りたるまま故障。

 との状況は、「エセックス」と「バターン」の攻撃隊おのおの13機8機による雷撃を記録していると思われる。そして米軍記録は、雷撃時刻を12時59分および13時8分と記していた。 また、

●13時41分、左60度7000メートルに雷跡四を認める。
●13時42分、単独左に回避。艦首500メートルに雷撃機撃墜(注:「バンカーヒル」隊の雷撃機と思われる)。
●13時44分、左舷中央部に魚雷2命中。

 「バンカーヒル」14機と「カバト」9機による猛攻の被害状況を示すと判断できる。米軍雷撃時刻は、12時58分13時20分と記録されていた。戦闘中の凝縮された記憶は、同時集中被害を正確な時系列で示すことを困難にしたと思われる。

 技術団の調査は第2波の攻撃を次のように報告した。

 第1次攻撃第2波は、午後1時頃と推定される。

 それは、第1波の去った40から45分後に開始された。 米戦略爆撃調査団報告の証言第133号の中で宮本砲術参謀は、左舷艦尾側に魚雷2本の命中、更に右舷艦中央部2分の1の位置に2本の命中を報告した。しかし彼は、その詳細な実証を示さなかった。

 これは、他の3名の士官の証言とは大きな食い違いである。3名は、すべて左舷艦中央部2分の1の位置に3本の魚雷の命中と右舷への1本の命中に同意した。なお、爆弾命中の証言はなかった。

 左舷を直撃した魚雷は、最下甲板12区の第八罐室と13区の第12罐室、第2船倉左舷15と16区の外側機械室および左舷14区の第4水圧機室に急激な浸水を引き起こした。

 森下参謀長は、この時点でこれらの区画から脱出できたのは下士官兵20人を越えなかったと報告した。浸水の範囲は、魚雷3から4本の命中があったことを示すことができた。 清水副砲術長は、最後部の命中は第2船倉の第143番肋材の隔壁近くで、そこは左舷第4水圧機室と外側機械室を分割する箇所であり、この2つの区画に浸水を引き起こしたと記憶していた。左舷への確実な魚雷3本の命中と、命中1本の見込みは、この時の攻撃中に起こったものとされた。

 3人の士官全員は、第125番肋材の近くを直撃した右舷への命中によって、急速に最下甲板12区の第七罐室へ浸水したことに同意した。3人は右舷へのいかなる被害をも知らなかった。 しかし、宮本砲術参謀は明確ではないが、魚雷2本目の命中が右舷に起こったことを思い出した。 第1次攻撃第2波の終了時、船体の傾斜は左舷におよそ15、6度であった。士官全員が、艦速は18ノット以下に落ち、後部艦橋付近の火災はなお続いていたことを認めた。右舷への注水が更に実施され、「大和」は左舷への傾斜をゆっくりと5度に復原した。

 

次のページ第84雷撃機中隊の雷撃図

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原勝洋

はらかつひろ

戦史研究家

1942年4月、静岡県生まれ。法政大学法学部卒業。

『高松宮日記』(中央公論社)の編集に関する調査に従事。

『文藝春秋』(昭和55年5月号)掲載の「暗号名ウルトラ 山本長官機を撃墜す」は、英訳され現在、米国国立公文書館Ⅱ所蔵の米軍極秘資料「Yamamoto shootdown」ファイルに収録されている。

『戦艦大和発見』辺見じゅんとの共著(ハルキ文庫)、『新装版・ドキュメント戦艦大和』吉田満との共著(文春文庫)の他、『零戦秘録』、『真相・カミカゼ特攻』、『暗号はこうして解読された』、『カラー写真で見る太平洋戦争』、『カラー写真で見る「原爆」秘録』、『真相・戦艦大和ノ最期』、『戦艦「大和」永遠なれ!』、『伝説の戦艦「大和」』(以上、KKベストセラーズ)などの編著がある。

 

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