その時「敵機100機以上! 操縦士の顔が見える‼️ 」米軍の波状攻撃に「大和」機銃が間に合わない‼️【特攻まであと5日】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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その時「敵機100機以上! 操縦士の顔が見える‼️ 」米軍の波状攻撃に「大和」機銃が間に合わない‼️【特攻まであと5日】

戦艦「大和」轟沈 75年目の真実②


 太平洋戦争最大の謎となる「天一号作戦」「戦艦大和ノ最期」に迫る第2回。大和の砲撃の合図とともに一瞬たりとも気が抜けない緊迫した戦闘、そして大和轟沈までのカウントダウンが始まることとなる。(原勝洋 編著『真相・戦艦大和ノ最期』第8章・写真『戦艦大和建造秘録』より引用)


■150以上の機銃を装備し、防空力を強化

25ミリ機銃の断面図。銃身先端にある閃光覆いは、約700-800発程度の射撃で溶解破損。

 低く垂れ込める雨雲の中の敵機に向けて発射されたのは、焼夷性と弾片効果を有する対航空機用3式焼霰弾(3式通常弾改一)であった。砲術長黒田吉郎によれば「雲間に見え隠れする敵機に対し主砲3式焼霰弾を撃ち込んだ。照準が十分できずその戦果は確認できなかった」と主砲発砲に関し証言している。

 この「大和」発砲は、攻撃側の撮影写真と証言から確認されている。

 日本海軍では砲撃時の距離は100メートルを単位とし、数量のみを言う決まりになっていた。十位以下を示すには、その上に点を付けることになる。 距離525メートルは「ゴテンフタゴ」、2万3800メートルは「フタサンヤァ」となるのであった。

 方位盤射撃指揮所の天蓋は上空視界を不良にし、近距離対空戦闘に不向きだった。潜望式双眼望遠鏡は、あくまでも水上戦闘における艦隊決戦照準用のものであった。

 主砲発砲時、その衝撃力を砲支筒(バルクヘッド)でまともに受けたのでは機構が破壊されるため、砲塔機構で吸収し、衝撃に耐えるよう綿密に計算されていた。

 主砲は大編隊機に対し備え、総員対空戦闘の配置につき、速やかに対空戦闘に対する処置をとる。 艦長は、来襲機の攻撃方法を瞬時に判断する。高射長は、高角砲(1分間に16発)が急降下爆撃に即応できるよう、あらかじめ適当なる方向、高角に備え、状況により射撃諸元を予調する。

 機銃(フランスのホッチキス社の特許、1発を装填すれば一連50発の鋼帯につながる弾薬包、1分間の連続発射数は最大230発)は高角砲に準じ、機銃群ごとにあらかじめ受け持ち区域の中央適当なる高角に備え、一般に照尺を予調する。 機銃は最後の増強で、前艦橋より前に新設された。しかし、前甲板に多数集中すると、射撃制限カムがあっても射撃範囲が狭く効果が薄い。

 横須賀海軍砲術学校北村委員作成の「艦船対空砲装ノ研究」によれば、「3機編隊の来襲機に対し一航過に少なくとも、その1機を撃墜し、他にも損害を与えることを要す。敵を撃破もしくは攻撃効果を無効ならしめる損害に対し八門を一群とする」としている。そのため、片舷あたり高角砲12・7サンチ砲8門、両舷で2群(16門)となる。

 機銃は6から9門をもって一群とし、一目標に対し二から三群を指向するのを理想とする。艦首尾に機銃18銃、各舷54銃を装備する。

 射撃装置を使用していない場合、命中率は極めて貧弱である。そこで敵機に向け射線をもってある程度薙ぐ方法、すなわち薙射方式を採用した。このための機銃の装備は多連装機銃を必要とするとしているが、3連装以上は装備されなかった。

 一方、艦船の排水量容積にはおのずから限度があり、現状の2、3連装をもってしては到底、所望の銃数は不可能となる。そのため多連装、一群18基を要望、最小限12基を必要とすると計算していた。水上戦闘第1主義の方針からは大いに変化しているが、なお水上砲を無視できないとして、米海軍が副砲を廃止して高角砲にしたような先見性はなかった。そこで機銃を極力強化し単艦良く防空力を高めることになったのである。「大和」は150以上の機銃を装備した。副砲は適当なる方向、高角に指向して、主として雷撃機に備え、状況により各砲群に分け、適当なる方向に旋回して置くとしていた。 「冬月」の中村俊一は、「大和に上がる旗旒信号を見て、全員戦闘配置に就いた。低く垂れ込める雲にめがけ大和は主砲を撃った。雲の切れ間から飛行機の大編隊が出てきた。攻撃1波が去ると、すぐに新しい攻撃隊が来た。数にはかなわない。どうしようもなかった」と証言している。

 

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原勝洋

はらかつひろ

戦史研究家

1942年4月、静岡県生まれ。法政大学法学部卒業。

『高松宮日記』(中央公論社)の編集に関する調査に従事。

『文藝春秋』(昭和55年5月号)掲載の「暗号名ウルトラ 山本長官機を撃墜す」は、英訳され現在、米国国立公文書館Ⅱ所蔵の米軍極秘資料「Yamamoto shootdown」ファイルに収録されている。

『戦艦大和発見』辺見じゅんとの共著(ハルキ文庫)、『新装版・ドキュメント戦艦大和』吉田満との共著(文春文庫)の他、『零戦秘録』、『真相・カミカゼ特攻』、『暗号はこうして解読された』、『カラー写真で見る太平洋戦争』、『カラー写真で見る「原爆」秘録』、『真相・戦艦大和ノ最期』、『戦艦「大和」永遠なれ!』、『伝説の戦艦「大和」』(以上、KKベストセラーズ)などの編著がある。

 

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