「大和」急速回頭できず、敵機爆撃「被弾!」その時19名の命が一瞬にして散った【特攻まであと4日】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「大和」急速回頭できず、敵機爆撃「被弾!」その時19名の命が一瞬にして散った【特攻まであと4日】

戦艦「大和」轟沈 75年目の真実③


 太平洋戦争最大の謎となる「天一号作戦」「戦艦大和ノ最期」に迫る第3回。当時世界最大とも言われた戦艦大和。艦隊に対する戦闘能力は高いが戦闘機の機動力にはさすが厳しいものがあった。そこで日本海軍はいかにして有利な状況に艦を動かすべきか最善の爆撃回避策を編み出していたのだが…。(原勝洋 編著『真相・戦艦大和ノ最期』第8章・写真『戦艦大和建造秘録』より引用)


■「大和」の運命を決めた弱点への一撃

 日本海軍における爆撃回避の狙いどころには、急所があり「コツ」があった。爆撃回避は高速大舵角で「グルグル」回るだけでは回避の目的は達せられない。「乙書」と略称した「雷爆撃回避運動法」(海軍省軍極秘第359号の8)の急降下爆撃回避法は、「敵機の進行方向を我が正横付近に保ち且つ急速回頭中なるとき最有利とする」と教えていた。それは急降下中敵機の照準線の左右変移量を最大にして、敵機の照準操作を困難にすることにあった。そして敵を正横付近に見る、すなわち、艦の横腹を敵に向けることを最も有利と考えた。

 敵の投弾方向を艦首尾線に向けることは命中率最大となるため絶対に避けなければならない。 「大和」への最初の一撃は、「雷爆撃回避運動法」が絶対に避けねばならない艦尾方向からの、雲間から逆落としで投弾する米機の攻撃を受けたことを示していた。 米軍報告にある後檣マスト下を直撃した爆弾は、対空捜索用1号電波探信儀3型の電探室鋼鉄鈑を真っ二つに裂いて送受信機、同期制御機、指示機、監視機の内部計器を跡形もなく破壊し、勤務員12名を一瞬にして散華させた

 またその弾片が、後部檣にある後部主砲指揮所の方位盤観測鏡についていた第3主砲砲台長村重進大尉の後頭部をえぐりとった。

 そして同時に、後部副砲指揮所で射撃指揮中の分隊長臼淵磐大尉以下6名をも戦死させた。 前檣下部の司令塔内では、能村副長の目の前にある全弾庫、火薬庫内温度表示盤に赤ランプがついた。

 それは庫内の温度が異常に上昇すると赤ランプがつき、爆発寸前になるとブザーがなる装置であった。応急員からの電話で「後部副砲弾庫、小火災」が伝えられた。

 

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原勝洋

はらかつひろ

戦史研究家

1942年4月、静岡県生まれ。法政大学法学部卒業。

『高松宮日記』(中央公論社)の編集に関する調査に従事。

『文藝春秋』(昭和55年5月号)掲載の「暗号名ウルトラ 山本長官機を撃墜す」は、英訳され現在、米国国立公文書館Ⅱ所蔵の米軍極秘資料「Yamamoto shootdown」ファイルに収録されている。

『戦艦大和発見』辺見じゅんとの共著(ハルキ文庫)、『新装版・ドキュメント戦艦大和』吉田満との共著(文春文庫)の他、『零戦秘録』、『真相・カミカゼ特攻』、『暗号はこうして解読された』、『カラー写真で見る太平洋戦争』、『カラー写真で見る「原爆」秘録』、『真相・戦艦大和ノ最期』、『戦艦「大和」永遠なれ!』、『伝説の戦艦「大和」』(以上、KKベストセラーズ)などの編著がある。

 

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