■ディストピアを生きるために貧困女子本から学ぶ

 当座は、世界に「やったもの勝ち」の「何でもあり」の残酷な無規範状態が深まっていくのだろう。そのように予感する私にとって、「貧困女子本」を読むことは、恐怖を恐怖で癒すような効果がある。生きている限りは生きていかなくてはならないことを教えてくれる。

「貧困女子」という言葉が出版界に登場したのは、2012年3月『FRIDAY』誌の「あなたの隣にもいる「貧困女子のビンボー生活」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/32064)であった。

 

 この記事は、単身女性の3分の1の年収は、手取り125万円以下であると報じている。彼女たちは、食費を切り詰めるために三食とも菓子パンですませ、衣類は防寒具以外は買わないと告白している。

 

2012年4月2日号の『AERA』では「「貧困女子」と「富裕女子」の境界」という特集が組まれた。大卒300人の女性の調査から、シングル25~39歳年収「250万円以下」と「500万円以上」の違いと共通点と転職の回数や、交際相手の男性の「有無」と彼の年収を発表した。

2013年2月にNHKの「おはよう日本」において「“望まない妊娠”女性たちの現実」が放送され、7月23日には地方発ドキュメンタリー「彼女たちの出産---2013 ある母子寮の日々」が放映された。

2014年1月27日にNHKの「クローズアップ現代」で「あしたが見えない---深刻化する“若年女性”の貧困」が放映された。その3ヵ月後の4月27日に「NHKスペシャル」で「調査報告 女性たちの貧困---新たな連鎖の衝撃」が特集された。

 

 これらの番組の内容は、NHK「女性の貧困」取材班編『女性たちの貧困“新たな連鎖”の衝撃』(幻冬舎、2014)に、番組で紹介されなかった取材内容も含めて、まとめられている。

 

 例をあげる。父親の死後に貧困に陥り無気力になった母親に代わり弟や妹の世話をし、アルバイトしながら学業を続ける女子高校生。年収200万円未満の非正規雇用職から抜けることができない大卒女性。奨学金の返済は待ったなしだ。幼い子を抱えて非正規の仕事を転々とするシングルマザー。父親の失職後は、中学から援助交際で自活している16才。コンビニでアルバイトしながら一泊1900円のネットカフェで2年間以上暮らしている19歳。願いは「明日の食事を心配しない暮らしをすること」だ。

 

『女性たちの貧困“新たな連鎖”の衝撃』は、貧困女子の実例紹介だけに終わらず、貧困女子を生む社会の変容についても言及している。飯島裕子の『ルポ 貧困女子』(岩波書店、2016)も「貧困女子」の実例紹介だけに終わっていない。