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北野中・東大で同窓だった松本善明氏が語る藤田田「学校の成績はともかく商売の天才なんですよ!」

藤田田とは何者か?連続インタビュー第一回〈松本善明氏〉

1926年生まれ、2004年没。日本マクドナルド創業者・藤田田を、2019年のいま「実感を持って」知る者は多くない。代表作『ユダヤの商法』の記述などから、その強烈なキャラクターが伺えるが、その素顔は。いったいどんな“人間”だったのか。外食ジャーナリストの中村芳平氏が、ゆかりの人を訪ね、聞く。インタビュー第一回に登場するのは、絵本作家・いわさきちひろの夫であり、旧制中学、大学で藤田田と机を並べた元共産党議員松本善明氏。

■学生時代はほとんど付き合いがなかったが、共産党立候補を機に接近

 松本善明と藤田田は、旧制北野中学校時代、東大法学部時代を含めて、ほとんど付き合いはなかった。それが急速に親しくなるのは、松本が61年(昭和36年)に日本共産党衆議院議員選挙予定候補者として次の選挙に東京4区(中選挙区、渋谷区、中野区、杉並区)から立候補することが決まってからだ。著書より引用する。

 ~その一方で、私は自らの人脈を活かして、立候補の挨拶を精力的に行いました。とりわけ北野中学の友人には力を入れて訴えかけました。(中略)
 戦後一五年が経過し、北野中学の同級生は各分野で活躍していました。新進経営者として大成功していたのは藤田田氏(後に日本マクドナルド社長)でした。大学も同じだった彼に面会を求めて、立候補の挨拶をしてカンパをお願いすると快く五〇万円という大金を出してくれたのには驚きました。後日、「共産党が政権を取ったときの保険金」としてカンパしたのだという主旨を自著に書き記しています。(中略)
 北野中学の2年後輩である手塚治虫さんにもすぐ挨拶に行きました。手塚さんはあまりにも著名でしたが、初対面の私と意気投合して迷わず巨額のカンパを出してくれました。手塚さんは一度のカンパだけでなく、その後一貫して私と共産党を親身になって応援してくれたのです。妻ちひろの仕事を高く評価していてくれたことも無関係ではなかったかもしれません。~

  (松本善明著『軍国少年がなぜコミュニストになったのか わが戦前・戦後史〉』より)

 松本は63年11月に実施された総選挙では初立候補であり、善戦したが落選した。捲土重来を期して戦った67年1月の総選挙では初当選した。以来、11期33年間の国会議員生活を送り、2003年に引退した。

 藤田は松本が初当選した67年1月の当選祝賀会に招待され、反共側の唯一の支援者として次のようなユーモアたっぷりの挨拶をした。こちらも著書より引用する。『ユダヤの商法』〈金儲けにイデオロギーは要らない〉の項に、以下の記述がある。

~日本へ無愛想な顔をして、日本がソ連(現ロシア)の方へ傾いたらそれこそ大変だからであります。そのアメリカの甘い顔がもたらす甘い汁を、たんまりといただくのが私の商売であります。日本が駄々をこねればこねるほど、アメリカは日本を大切にしてくれます。

 つまり、日本という体の中に、共産党というバイ菌がいて、それが暴れれば暴れるほど、アメリカという医者は日本へ良薬を与えてくれるのであります。

 その駄々をこねる役割り、バイ菌の役割り、私は、日本の共産党にそれを期待しているのであります。

 松本君は当選し、みごとにバイ菌の一つとして培養されました。私の投資は成功したのであります。~

               (藤田田著『ユダヤの商法』 1972年5月初版より)

 松本と藤田は総選挙をきっかけに親しく交流するようになった。

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中村 芳平

なかむら よしへい

外食ジャーナリスト

外食ジャーナリスト。1947年、群馬県生まれ。実家は「地酒の宿 中村屋」。早稲田大学第一文学部卒。流通業界、編集プロダクション勤務、『週刊サンケイ』の契約記者などを経てフリーに。1985年学研のビジネス誌『活性』(A5判、廃刊)に、藤田田の旧制松江高等学校時代の同級生を中心に7~8人にインタビュー、「証言 芽吹く商才 人生はカネやでーッ! これがなかったら何もできゃあせんよ」を6ページ書いた。これがきっかけで1991年夏、「日本マクドナルド20年史」に広報部から依頼されて、藤田田に2時間近くインタビューし、「藤田田物語」を400字約40枚寄稿した。今回、KKベストセラーズの「藤田田復刊プロジェクト」で新しく取材し、大幅に加筆修正、400字約80枚の原稿に倍増させた。タイトルを「藤田田 伝」と改めて、『頭のいい奴のマネをしろ』『金持ちだけが持つ超発想』『ビジネス脳のつくりかた』『クレイジーな戦略論』の4冊に分けて再収録した。現在、外食企業経営者にインタビュー、日刊ゲンダイ、ネット媒体「東洋経済オンライン」「フードスタジアム」などに外食モノを連載している。著書に『笑ってまかせなはれ グルメ杵屋社長 椋本彦之の「人作り」奮闘物語』(日経BP社)、『キリンビールの大逆襲 麒麟 淡麗〈生〉が市場を変えた!』(日刊工業新聞社)、新刊にイースト新書『居酒屋チェーン戦国史』などがある。

 

 

 

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