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倒産か身売りか…そのときジョブズが下した決断とは?

スティーブ・ジョブズのリーダーシップを読み解く。

■ジョブズ不在を乗り越えて。初の1兆ドル企業に

 

 アメリカに相次いで時価総額1兆ドルを突破する企業が誕生しました。ニューヨーク証券取引所の歴史は1792年に始まりますが、200年を超える歴史の中で初めてアップルが1兆ドルを突破(2018年8月2日)したかと思うと、そのわずか33日後の9月5日にアマゾンも1兆ドルの大台に乗せ、近いうちにグーグルの親会社アルファベットなども続くのではと言われています。

 企業を評価する尺度は時価総額がすべてではありませんが、日本一のトヨタ自動車の時価総額が約22兆円ということを考えると、アップルやアマゾンの巨大さがよく分かります。アップルの創業は1976年のことです。スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアック、ロン・ウェイン(間もなく離脱)の3人で創業、ジョブズの実家のガレージでアップルⅠを組み立てるというほんのささやかなスタートでした。

 以来、40年余りで1兆ドル企業へと成長したわけですが、その軌跡はほぼ一直線に成長し続けたアマゾンとは違って山あり谷ありのものでした。76年に創業のアップルはアップルⅡの大ヒットにより創業からわずか4年で株式を公開、その後もマッキントッシュによって一大ブームを巻き起こしたものの、85年にジョブズはアップルから追放されています。

 以来、アップルは約10年余りに渡ってジョブズ不在の時代を迎えるわけですが、その間、アップルはジョン・スカリーの下、栄光の時代を迎えたこともありますが、その後は転落の一途を辿り、話題になるのは「商品」ではなく「身売りか倒産か」という悲惨な話ばかりでした。

 1997年、ジョブズが暫定CEОに就任した当時の時価総額はわずか23億ドル程度に過ぎませんでした。株式を公開した際の時価総額が約18億ドルですから、時価総額はわずか5億ドルしか上がらなかったことになります。

 そして10年後の2007年6月、ジョブズが初代のiPhоneを発売したことでアップルの時価総額は1000億ドルを突破、2010年には2959億ドルで世界時価総額ランキングのベスト10に初めてランクインしたかと思うと、翌2011年にはエクソンモービルを抜いて1位となり、2018年には世界初の1兆ドル企業の座についています。

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桑原 晃弥

くわばら てるや

1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ生産方式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問として、『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』(成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(PHP新書)などの制作を主導した。著書に『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP文庫)、『ウォーレン・バフェット成功の名語録』(PHPビジネス新書)、『伝説の7大投資家』(角川新書)、『トヨタのPDCA+F』(大和出版)など。バフェット関連書籍多数。


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