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【課題は教員確保】少人数学級実現に不可欠な支援と施策を考える

第79回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■自治体の格差を是正して少人数学級の実現を

 協議会で示された資料には、「公立小・中学校等の教員定数の標準に閉める正規教員の割合(令和2年度)」というのもある。それによれば、公立小中学校の教員定数に対する正規教員の割合が9割未満の自治体が11府県4政令市にのぼる。残りは、非正規の臨時教員などで補われている。
 割合が最も低かったのは沖縄県(83.7%)で、奈良県(85.0%)、宮崎県(87.7)と続いている。それは、言い換えれば非正規教員の占める割合が多い順でもある。

 割合が高いトップは東京の105.1%で、教員定数以上の正規教員を雇うことができている。ここからも分かるように、非正規教員の割合は自治体の財政状態と大きく関係している
 公立教員の給与は、その3分の1を国が負担し、残りを学校の設置者である自治体が負担することになっている。しかし財政的に苦しい自治体は、本来は1人分に充てなければいけない予算を複数人分に充てている。
 しかし、そうなれば、もちろん正規教員としての給料には足りなくなる。結果として、非正規教員として雇うことになる。非正規教員の待遇は当然ながら悪くなる。これが学校現場をブラック化させている一つの要因として、問題視されている。

 自治体が予算を抑えながら少人数学級を実現しようとすれば、ますます非正規教員を増やしていくことになりかねない。文科省としては非正規教員の割合を減らし、正規教員を増やすように言っているが、効果的な策は講じられていない。背に腹は代えられない自治体がで非正規教員がさらに増えるいけば、学校と教員のブラック化もあわせて進むことになるだろう。

 35人学級で教員を増やさなければならない状況は現実であり、萩生田文科相が意欲をみせている中学校の35人学級や、さらに30人学級を進めていこうとすれば、なおさらだ。それで学校のブラック化が深刻になれば、ますます教職志望者が減少することになるのは避けられない。

 教職志望者を増やし、少人数学級の実現に必要な教員数を確保するためには、学校のブラック化を解消することが先決である。それには、文科省と地方自治体が一緒になり、前向きに取り組んでいくことが不可欠なのだ。そのためにも、協議会での話し合いの今後の展開が注目される。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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