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【なぜ校則では茶髪が禁止なの?】教員は校則について生徒に説明ができるか

第67回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

校則

■茶髪が原因で修学旅行に行けない

 日本の学校では、校則が子どもたちをがんじがらめにしている。中にはあまりの強引さから「ブラック校則」と呼ばれるものさえ存在する。そんな中、校則の見直しや廃止を求める声も高まりつつある。しかし、その動きに冷水を浴びせた形になりかねないのが、2月16日に大阪地裁が下した判決だった。

 2015年4月に大阪の府立高校に入学した女子生徒が、同校の「パーマ・染色・脱色・エクステは禁止する」との校則に違反しているとの指摘を学校側から受けた。それに対して女子生徒は、「生まれつきの地毛が茶色」だと主張。それでも黒く染めて登校したものの、「黒染めが不十分だ」として、さらに黒く染めるように、教員らが生徒に繰り返し指導している。挙げ句に、授業への出席が認められず、修学旅行への参加も認められなかった

 そして、生徒は不登校になった。

 その元女子生徒(現在21歳)が、大阪府を相手に、慰謝料など約220万円を求める訴訟を起こした。その地裁判決が、16日に下されたのだ。
 大阪地裁は、高校の頭髪指導の違法性を認めなかった。つまり、地毛だとする女子生徒の説明を無視して黒く染めさせ、授業に出席させず、修学旅行への参加も認めない指導に対して「概ね違法性はない」と判断したのだ。

 ただし、不登校になった女子生徒が3年生に進級した際に、学校側は教室に生徒の席を置かなかったり、学級名簿に名前を載せなかった。これらについては、「生徒に与える心理的打撃を考慮せず、著しく相当性を欠く」と判断し、大阪府に33万円の賠償を命じている。
 大阪地裁が元女子高生の言い分を全面的に認めなかったのは、「(学校側が)合理的な根拠に基づいて生徒の髪の生来の色は黒だと認識していた」と判断したからである。生まれつき茶髪だったという元女子生徒の言い分は認められなかった。

 問題は、髪を染めることを禁止した校則について「学校の正当な教育目的で定められた合理的なもの」だとしたことだ。
 パーマや染色を禁じる校則について、華美な頭髪を制限することで生徒に学習や運動に注力させ、「非行防止」につなげるという目的などから適法と大阪地裁は判断している。これは、校則について学校側の裁量を認めてきた過去の司法判断を踏襲したものでしかない。
 今回の大阪地裁での判決も、学校側が校則を設けることを正当とし、それに従って教員が生徒を指導することについても「当然」と認めたことになる。

 これによって、学校が校則を設け、教員が厳しく指導する状況に変化は起こりにくくなるだろう。それどころか、大阪地裁の判決が子どもたちを縛る校則を強化する動きを加速してしまわないだろうか。
 そういう意味では、この判決内容は今後も議論されていくはずである。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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