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【どうなる? 18歳の1票】『有権者教育』の目的と文科省の責任

第72回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

選挙
18歳の高校生たちも、自分の意思を反映できるような「有権者教育」が求められる

■「主権者教育推進会議」の座長見解

 選挙で投票できる年齢(選挙権年齢)が、2015年6月の公職選挙法の改正で18歳に引き下げられた。これによって高校3年生も選挙権を持つことになった。それにともなって、学校における有権者教育が注目されていくことになる。政治の当事者であることを自覚するための教育である。

 その有権者教育を推進していく施策を検討するのが、文科省の「主権者教育推進会議」の役割だ。今年3月31日に最終会合が開かれ、そこで最終報告がまとめられた。そこには、各学校段階から家庭や地域における主権者教育の充実に向けた提言が盛り込まれている。

 その最終報告はもちろんだが、注目すべきは「座長見解」なるものである。これは最終報告の提出に際して、篠原文也座長(政治評論家)が自らの見解として述べたものだ。
 当初は最終報告に盛り込むことを座長として望んでいたらしいが、一部の委員から「推進方策が進まない場合の対応まで踏み込むべきではない」との指摘があったため、最終報告とは切り離した座長見解にしたのだという。

 その座長見解とは、「推進方策を進めても『投票率』や『投票の質』の向上・深まりにつながらない場合は、諸外国の状況も参考にしながら、将来的には投票の在り方について検討すべきではないか。その際、憲法改正が必要になるかもしれないが、投票の義務化も選択肢になるのではないか」というものである。
 最終報告に盛り込まれた有権者教育を推進する施策を実行していっても投票率が上がっていかなければ、投票を義務とする、つまり「強制的に投票させる」ことが必要だというのだ。

 義務である納税を怠れば延滞金を課せられたり、財産を差し押さえられることもある。それと同じように、投票に行かなかった場合に、なんらかの罰が課せられる可能性も考えられる。
 罰則云々については想像の域でしかないのだが、投票を義務化して強制的に選挙に参加させるという案は、最終報告から切り離した座長見解だとしても、かなりな衝撃である。また、投票に行かせることだけが主権者教育の目的なのか、という気もする。

 主権者教育については、2月24日の閣議後記者会見で萩生田光一文科相が触れている。2月19日に主権者教育推進会議の第18回会合が開かれ、そこで今回の最終報告につながる「最終報告案」が示された。それに関連して記者から、次のように質問されたからだ。

「主権者教育の課題として、政治的中立性などの観点から、学校現場の腰が引けているんじゃないかという指摘がある。そのような状況で厳しい政策判断などに関する主権者教育は難しいと思うが、大臣はどのように進めていくべきだと考えているのか」

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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