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【過去最多の認知件数】増加するイジメ問題を学校はどう防ぐのか

第77回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■イジメに起因する深刻な問題も…

 いじめ防止対策推進法が2013年度に施行され、いじめに対する学校側の注意・監視が強まったことの効果はあるはずだ。また、従前はいじめと認知していなかったことを、いじめとして認知するようになったために認知件数が増えたことも、十分に考えられる。
 それにしても、過去最多となった認知件数は、それだけでは説明しにくいものだとも言える。学校が注意深く見るようになったこともあるが、同時に、いじめの件数そのものが増えていると考えたほうが自然に思える。8割のいじめが学校の指導などで解消しているならば、これほどいじめ問題がクローズアップされることもないのではないだろうか。

 また、先ほどの文科省調査によれば、学校が把握した児童生徒の自殺者数は2019年で317人となっている。前年度の332人を下回ったとはいえ、その数は増え続けている。さらに、不登校の数も減ってはいない。2019年度の結果でも、小中学生で18万1,272人と過去最高となっている。高校生においては5万100人である。
 その不登校の原因を学校が正確に把握できているかといえば、そうとは言えないだろう。不登校には、何らかのいじめが関係しているとも言われている。そのなかには、学校が把握できていないものも多くあるはずだ。

■学校による指導の効果はどうか

 8割以上のいじめが解消されていると言われても、自殺者や不登校者の数を見ればまったく楽観はできない。そして、学校が「解消されていない」と認める案件も2割近くもあるのだ。いじめ問題は依然として大きな問題であり続けている、と考えざるをえない。
 いじめ防止対策推進法がつくられるきっかけとなったのは、大津市の中2男子生徒の自殺で教育委員会や学校のずさんな対応が表面化したことだった。推進法は、学校や行政などの責務を定めた法律である。

 いじめに関して教育委員会や学校の責任が厳しく問われることになったわけで、だからこそ教育委員会や学校はいじめが起こることにナーバス神経になった。責任問題にならないように、教育委員会も学校も注意・監視を強化するようになったわけだ。それでも、いじめはなくならない。

 いじめ防止対策推進法は学校や行政の責務を定めているとはいえ、実際には問題の発見・解決は学校に丸投げされている。学校にいじめを根本的に解決できる力があるのか、学校だけで解決できる問題なのかどうか、そこから考え直す必要があるのではないだろうか。
 誰かに責任をとらせることでは、いじめ問題は解消しない。根本的なところから検討し対応していかなければ、旭川市のような事件もなくならないだろう。学校が、いじめ問題という重荷を降ろせる日もやってこないのだ。

 

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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