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連続出場が途切れた箱根駅伝名門校。その主将を任された1年生の涙

箱根駅伝ノート・中央大学 第2回

逆境の1年生キャプテンが見せた力量

 舟津の熱い挨拶に、OBや大学関係者からは「がんばれ!」という声とともに拍手が送られた。しかし、実生活では厳しい現実が待ち受けていた。陸上部の寮に電話やFAXで厳しい声が続々と届いたのだ。なかには「1年生にキャプテンをやらせるから予選落ちするんだ」と舟津を名指しで非難する者もいた。

 箱根駅伝がないという〝喪失感〟にさいなまれたなかで、チームは予選会の1週間後に日体大長距離競技会に出場。舟津は5000mで13分50秒79の自己ベストで走り、気を吐いた。

「予選会後の雰囲気は本当にどんよりしたものでしたし、自分もこんな気持ちで走れるのかなという思いもあったんです。でも選手としては、ベストな状態で試合に臨み、手を抜かずに走ることが義務だと思うので、そこは譲りたくなかった。それに喪失感を味わったのは自分たちだけじゃなくて、応援してくれた方やOBの方々も同じです。そういう皆さんに中大が動き出したんだということを知ってもらいたかったので、結果につながって良かったと思います」

 今季も主将としてチームを引っ張っている舟津だが、まだ2年生。先輩たちの顔色も気になるかと思いきや、威風堂々とキャプテンとしての役割をまっとうしている。

「先輩ですか? 自分はそういうのは気にしていません。キャプテンとして立っているので、相手が先輩だろうと、臆せず物は言います。先輩に対しても、キツい言い方をしていることは自分でもわかっているんですけど、キャプテンが下に見られてしまうとチームはまとまらないですから」

 舟津は「箱根駅伝は嫌い」「マラソンは大嫌い」と話すなど、箱根駅伝が〝すべて〟だと思っていない。マラソンは性格的に好きではないと言い、トラックランナーとして、自分の能力を高めようと競技に向き合っている。

 藤原監督も才能ある選手には箱根駅伝だけでなく、世界を見据えるような指導をしており、舟津は今年2月に単身渡米。ロンドン世界選手権の3000m障害で銅メダルを獲得したイバン・ジャガーも所属するバウマン・トラッククラブ(BTC)のトレーニングに参加した。約4週間、ジャガーらと一緒に過ごしたが、そこで舟津は圧倒的な差を感じたという。

「自分の力のなさだけじゃなくて、日本の陸上界自体これでいいのかなという思うくらいの衝撃を受けました。でも自分は今を頑張るしかありません。自分がどこまで行けるのか。それを追い求めていきたいと思っています」

 舟津はサッカーでいえば典型的な〝ストライカー〟タイプだ。自らの力でゴールをこじ開けてきたからこそ、主将を務めるなかで、先輩に助けられたことはあまりないという。

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酒井 政人

さかい まさと

1977年生まれ、愛知県出身。「箱根」を目指して東京農業大学に進学。1年時に出雲駅伝5区、箱根駅伝10区に出場。2年時の故障で競技の夢をあきらめて、大学卒業後からスポーツライターに。陸上競技をメインに取材して、様々なメディアに執筆している。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』(角川新書)、『箱根駅伝監督 人とチームを育てる、勝利のマネジメント術』(カンゼン)、『東京五輪マラソンで日本がメダルをとるために必要なこと』(ポプラ新書)。


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