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「世の中のバカ化」の進行を止めるただひとつのやり方とは?(小田嶋隆×武田砂鉄【後編】)

武田砂鉄さん

その時代の「空気」の資料集

武田「日本の空気がどうだとか、同調圧力だとか自粛警察だとか、そういう言葉を用いながら日本社会が語られます。でも実際、そのときの空気ってどうだったのか、同調圧力がどんなものだったのかを捉えようとすると、意外とベースになる素材がなかったりする。なんたって、空気ですから。そう考えると、今回の小田嶋さんの10年分のツイートは、空気を集めたものになったのではないかとも思います」

小田嶋「そうですね。時代の空気の資料集としても、いいのかもしれません。多分そういうものって、ちゃんとした文章とかコラムとしてはまとまりきらなくて、むしろツイートのような断片がたくさん集まっているところから垣間見えるものでしょうから」

武田「それこそ、『現代用語の基礎知識』的な、『2019年にはこういうことがありました』という記録からは、この手の空気はこぼれ落ちていく。たとえば2月に話題になった出来事が3月くらいにはどんな感じで受け止められていたのか、というようなことは、年表からは見えてこない」

小田嶋「読者にしてみれば、自分にとって2019年はこういう年だったけど、小田嶋はこんな風に書いてるんだ、っていう差もあるはずなんです。ただ、ある時代のある局面の断面は、その人なりに見えると思いますね」

武田「自分の記憶の断片と反応する面白さがあると思うので、そこを楽しむ読み方もあると思います」

小田嶋「この本のいいところは頭からちゃんと読まなくても、時々好きなところを開いて2~3ページ読んで、また閉じてっていうことができること。トイレに置いておくのにいいと思います」

武田「ああ、それはいいですね。長居もできるし、パッと読んで出てもいいし」

小田嶋「全366ページなので、パラパラめくって、なるほどねと閉じて。そうして1年かけて読了してください」

(小田嶋隆×武田砂鉄 特別対談【後編】)

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小田嶋隆(おだじま・たかし)

1956年東京赤羽生まれ。早稲田大学卒業。一年足らずの食品メーカー営業マンを経て、テクニカルライターの草分けとなる。国内では稀有となったコラムニストの一人。著書に『小田嶋隆のコラム道』『上を向いてアルコール』『小田嶋隆のコラムの切り口』(以上、ミシマ社)、『ポエムに万歳!』(新潮文庫)、『地雷を踏む勇気』(技術評論社)、『ザ、コラム』(晶文社)、『友達リクエストが来ない午後』(太田出版)、『ア・ピース・オブ・警句』『超・反知性主義入門』(以上、日経BP)、『日本語を、取り戻す。』(亜紀書房)など多数。

武田砂鉄 (たけだ・さてつ)

1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。著書に『紋切型社会―言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、2019年に新潮社で文庫化)、『芸能人寛容論―テレビの中のわだかまり』(青弓社、2016年)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋、2017年)、『日本の気配』(晶文社、2018年)、『わかりやすさの罪』(朝日新聞出版、2020年)などがある。新聞への寄稿や、週刊誌、文芸誌、ファッション誌など幅広いメディアでの連載を多数執筆するほか、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍している。

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