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「社会保障は性風俗に敗北した」を考える

「セックスワークサミット2017秋」レポート 前編

●社会的養護としての性風俗やJKビジネス

 近年、メディアで特別養子縁組や児童養護施設などの「社会的養護」の領域に焦点が当てられる機会が増えている。 社会的養護とは、保護者のない子どもや虐待等の理由で、家庭で生活できない子どもを、保護者に代わって社会が養育・保護する仕組みである。 家族というセーフティネットから弾かれた結果、児童養護施設や里親家庭などの社会的養護のもとで生活する子どもたちには、手厚いケアが必要とされる。

 しかし現実は、制度の不備や社会資源の不足などの理由で、子どもたちが十分な社会的支援を受けられない状況に置かれ続いている。 そんななか、性風俗やJKビジネスの世界が、保護者もいなければ学歴もない十代の未成年者にとって、良くも悪くも社会的養護の制度上の欠陥を埋める機能、そうした若者の受け皿としての役割を果たしてきたとも言える。それはいったいどういうことだろうか。

「これからの性風俗産業の進むべき方向性を考える」として開催された「セックスワーク・サミット2017秋」では、子どもたちが施設を退所した後のアフターケア・特別養子縁組・少年司法の現場から、社会的養護の現状、及び性風俗との関係を可視化した上で、社会福祉に携わる専門職や支援者、風俗業界関係者、そして、個々人が同じ社会に生きる一員として、何ができるのかが議題にあがった。 アフターケアの現場から見えてくる社会的養護と性風俗の関係、そして性風俗の世界で働く若者に対して支援者が取るべき姿勢について、アフターケア相談所「ゆずりは」所長の高橋亜美さんは、こう語っている。

 
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「セックスワーク・サミット2017冬 「つながる風俗女子」+シンポジウム「みんなでつくる『適正風俗』」(主催:一般社団法人ホワイトハンズ)が、2017年12月3日(日)に、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されます。

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坂爪 真吾

さかつめ しんご

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。



新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗店の待機部屋での無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『はじめての不倫学』(光文社新書)などがある。


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