松井・吉村両氏が投票結果を「重く受け止める」「再挑戦しない」と言明した理由 (藤井聡) |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

松井・吉村両氏が投票結果を「重く受け止める」「再挑戦しない」と言明した理由 (藤井聡)

「公明賛成」にも関わらず「二回連続・否決」された重大な意味

 そんな中、当方が上記のように漠然と予期していたように、住民投票が近づくにつれて、徐々に都構想の「真実」が有権者一人一人に浸透していき、メディア各社の世論調査における反対率が少しずつ増えていったのです。

 それは当方にしてみれば、さながら奇跡を見ているような心持ちでした。

 そして、投票の一週間前になると、いくつかの世論調査で「反対多数」となる程に「賛否拮抗」する状況になったのです。

 繰り返しますが、公明党の賛成派への転身や吉村人気、さらには、6月時点で賛成は圧倒的有利な状況からのスタートであったことを踏まえれば、「賛否拮抗」という状況は、奇跡的な状況となったと言うことができるわけです。

 つまり、わずか数ヶ月前の時点で賛成派が14%も反対派を引き離していた状況があったにも関わらず、投票日が近づき、事実が有権者に知れ渡るにしたがって、反対派が多くなり、最後、反対多数となったという事実は、大阪市民の「真の民意」はやはり、「大阪市存続」であったという事を示す強烈な証左の一つと言うことができるでしょう。

 そもそも、事実を知らず、イメージだけで作られた世論を「ふわっとした民意」と呼ぶとするなら、しっかりと情報を集め、しっかりと考えた場合の民意をこそ、「真の民意」と呼ぶべきものだからです。

・・・・

 いずれにしても、この度、戦後日本人がほとんど経験したことのない、壮大な政治的議論を「二度」も経て最終的に決断を下された大阪市民の皆様に、心からの敬意を表したいと思います。

 あわせて、同じく松井市長が

「結果が出ましたんで、この結果をうけまして、新たにここから」

https://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/201101/plt20110123360027-n1.html

とおっしゃったように、これからは分断、対立することなく大阪市民一体となって(同じく松井市長がおっしゃった)「大阪を愛」する気持ちを共有しながら、大阪市、そして大阪府、さらには日本全体の発展への貢献に向けた様々な取り組みをなされていくという大阪市民の決断に、心からの祝福と敬意を改めて申し上げたいと思います。

https://the-criterion.jp/mail-magazine/tokosohiketsu/

 

 

KEYWORDS:

オススメ記事

藤井 聡

ふじい さとし

1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授(都市社会工学専攻)。京都大学工学部卒、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科研究員、東京工業大学助教授、教授等を経て、2009年より現職。また、11年より京都大学レジリエンス実践ユニット長、12年より18年まで安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)、18年よりカールスタッド大学客員教授、ならびに『表現者クライテリオン』編集長。文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。専門は公共政策論。著書に『経済レジリエンス宣言』(日本評論社)、『国民所得を80万円増やす経済政策』『「10%消費税」が日本経済を破壊する』『〈凡庸〉という悪魔』(共に晶文社)、『プラグマティズムの作法』(技術評論社)、『社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版)、『大衆社会の処方箋』『国土学』(共に北樹出版)、『令和日本・再生計画』(小学館新書)、MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実(晶文社)など多数。

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

都構想の真実 「大阪市廃止」が導く日本の没落
都構想の真実 「大阪市廃止」が導く日本の没落
  • 藤井 聡
  • 2020.10.12