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名古屋をめぐる英傑。〈豊臣秀吉〉ゆかりの地を歩く

名古屋地名の由来を歩く【英傑のふるさとを訪ねる②】

ノンフィクション作家、谷川彰英が名古屋をたどる。戦国の英傑、ゆかりの地とは? 夏休み、近郊の方はぜひ実際に足を運んでほしい。『名古屋地名の由来を歩く』(著・谷川彰英)より、立身出世の英雄、豊臣秀吉の生地をめぐる。

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「中村」秀吉の生地を訪ねる

 秀吉が尾張国中村で生まれたことは、教科書風には知っていた。ところが、その「中村」が名古屋市の「中村区」の「中村」だとは思いもしなかった。実は名古屋駅の所在地は「中村区」で、いつも乗り降りしていた新幹線の駅は秀吉ゆかりの「中村」なのである。このような歴史的背景を意識して新幹線に乗っている人は、まずいないであろうが、その事実を知れば、名古屋という町に対する見方も変わってこよう。実際、新幹線側の出口から10分も歩けば、中村区役所である。

 地下鉄東山線に中村公園駅(名古屋市中村区)がある。この駅の前に巨大な鳥居が建てられており、その参道をまっすぐ進むと中村公園になる。その公園の中に秀吉を祀った豊国神社がある。この辺に秀吉が生まれたといわれてきた。

 豊国神社は秀吉の神社にしては、いかにも小さ過ぎる神社ではある。明治18年(1885)に創建されたが、昭和34年(1959)の伊勢湾台風によって被害を受け、修復されたものだという。
 公園の一角には中村公園文化プラザなる建物が平成3年(1991)にオープンし、その2階に「名古屋市秀吉清正記念館」が整備されている。清正は秀吉より25歳も若い武将だったが、後に熊本城主になるほどの人物であった。ほとんど同じ村といっていいこの地に秀吉と清正という希代の英雄が二人も出ていることに、まず私たちは目を見張る。

 公園の東側に常泉寺という日蓮宗のお寺がある。ここが秀吉の生まれた地だともいわれている。

『尾張名所図会』にはこう記してある。

 太閤山常泉寺 同村にあり。日蓮宗、萱津妙勝寺末。元和九年十月十二日、圓住院日誦(えんじゅういんにっしょう)の開基なり。此地秀吉公の誕生の跡なる故山号とす。境内に太閤手づから植ゑ給ひし狗骨樹(ひらぎ)ありて、今に繁茂す。その外公の事跡甚多し。本堂は今廃して太閤堂のみのこれり。

駅前にそびえる巨大な鳥居

秀吉生誕の碑

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谷川 彰英

たにかわ あきひで

筑波大名誉教授

1945年長野県生まれ。ノンフィクション作家。東京教育大学(現・筑波大学)、同大学院博士課程修了。柳田国男研究で博士(教育学)の学位を取得。筑波大学教授、理事・副学長を歴任するも、退職と同時にノンフィクション作家に転身し、第二の人生を歩む。筑波大学名誉教授。日本地名研究所元所長。主な作品に、『京都 地名の由来を歩く』シリーズ(ベスト新書)(他に、江戸・東京、奈良、名古屋、信州編)、 『大阪「駅名」の謎』シリーズ(祥伝社黄金文庫)(他に、京都奈良、東京編)『戦国武将はなぜ その「地名」をつけたのか?』 (朝日新書)などがある。

 

 

 

 

 

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  • 谷川 彰英
  • 2011.10.08