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【感染予防・学力向上・教員の働き方改革】何のための「少人数学級」かを本気で議論すべき

第39回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

少人数制

■「少人数学級」が是であることは間違いない

 少人数学級についての議論が活発化しそうな気配である。きっかけは、やはり新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)だった。
 新型コロナ感染予防のために、文部科学省(文科省)は学校において「3密(密閉、密集、密接」を避けるように再三にわたって指示を出している。そうした中で、3密を避けるには1クラスの人数を減らす必要があるとの意見が多く聞かれるようになった。

 公立小中学校における1クラスの人数は、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」で決められている。それによれば小中学校の1クラスの標準人数は40人とされている。
 この40人というのは上限である。絶対に40人でなければならないということではなく、下回ってもいいことになっている。たとえば、ある学年の全体数が72人だったとすると、40人クラスを2つは編成できないので、36人ずつのクラスを2つ編成することになる。
 そして、少人数学級とは現行の標準人数40人を引き下げることを指している。40人という人数では、教室はぎゅうぎゅう詰めの状態である。その光景を見てみれば、新型コロナに関係なく、「もっと余裕のある教室にすべきだ」と誰もが感じるはずである。

 1クラスあたりの人数を減らせば、それだけ机の間隔が広がることにもなる。つまり、密集、密接の回避となり、文科省のいうところの新型コロナ対策につながるわけだ。
 3密回避に本気で取り組む気があるのなら、文科省は早急に少人数学級を実現すべきである。しかし8月4日の記者会見で、萩生田光一文科相は「制度上、来年の4月からスタートするのはちょっと難しい」と話している。
 これでは「文科省は少人数学級に消極的」と受け取られることを心配したのか、同日、記者会見での発言を補足するコメントを報道機関向けに発表している。それは次のような内容だった。

「少人数学級について、『制度上、来年の4月からスタートするのは難しい』と発言した趣旨は、来年度から直ちに全ての学年において、少人数学級を実施することは、施設面や人材確保の面でも困難である、という趣旨」

 その上で「来年度からの段階的な実施も含め、検討したいと考えている」と踏み込んでもいる。文科省としての積極性をアピールしているわけだ。とはいえ、新型コロナ対策としてはスピード感に劣るという印象は否めない。

■文科省は積極的なのか消極的なのか

 少人数学級を全学年で実施するとなれば、教室も増やさなければならないし、当然ながら教員の増員も必要になる。文科省の言うように「困難」なことではある。
 しかし新型コロナの影響による長期休校が開けてから、学校では分散登校や分散授業が実施されたことで、実質的な少人数学級が実現されていたのだ。
 もしも新型コロナ対策を優先するなら、この実質的な少人数学級を継続することも考えられる。これに萩生田文科相は8月4日の記者会見で「いまの段階の延長として、このまま少人数学級にできないのかと問われれば、それはちょっと乱暴な議論だと思う」と否定している。
 3密を声高に叫びながら、実質的な少人数学級を続けることには消極的なわけで、矛盾している。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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