【街金は見た!】街金が絶対にお金を貸せない条件《逃げる債務者、回収する債権者の知恵くらべ》 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

【街金は見た!】街金が絶対にお金を貸せない条件《逃げる債務者、回収する債権者の知恵くらべ》

【テツクル半生記】あのころ、ぼくは、若かった。Vol.6

 


 日頃見えてこない生活金融の現場。『ぼく、街金やってます』の著者であり、現役街金経営者のテツクル氏の実話をもとにバラ色の20代から暗黒の20代後半へと変わるお話しをする。
 多重債務者の現実。それを「見続け、貸し続け、回収する」街金の現実。
 債務者と債権者の壮絶なドラマをお届けします。


■街金にとって一番怖いものとは何か

テツクル

 

 街金にとって、反社会的勢力、世間でいう「反社」は絶対に付き合ってはいけない相手です。
 たまに債務者を詰めると、
「ちょっと同席してもらいたい人がいるんで」と、ガラの悪いおじさんを連れてくることがあります。
 これは困ります。早々にお引き取りいただくように促します。繰り返しますが、こちらから積極的にも消極的にも反社とお付き合いすることは絶対ありません。
 お付き合いしてることがバレたら、問答無用で貸金業の免許を召し上げられてしまいます。ぼくが怖いのは、反社よりも、貸金業の免許でぼくの首根っこをおさえてる東京都です。都庁には足を向けて寝てません。
 都庁の皆さま、ぼく、法令遵守して真面目にやってますから、大丈夫ですよ。
 
 あと、担保にする不動産に反社がかかわっている場合もお金は貸せません。
 もし、担保物件のマンション内に反社の影があれば、当然貸せません。一戸建でも近所にそういう人がいたら貸したくないですね。売って返済できないケースがあるから。
 そうです、街金も反社とはかかわりたくないんです。
 
 ある日、ひとりの債務者候補が、知り合いのブローカーに連れられてやってきました。内装業を営むCさん。
「ああ、これはテツクルさん、はじめまして。このたびはよろしくお願いいたします。助かりますありがとうございます。これをご縁に、なにとぞぜひ長いお付き合いを……」
 ものすごく下から目線のCさん。
 自宅マンションを担保にお金を借りたいとのことで、翌日Cさん宅を訪問しました。街金でも、担保になる物件は必ず見に行きます。
 
 Cさん宅は、東京の下町。1階に中華料理屋の入ったマンションです。
 中華料理屋が入ったビルやマンションは、換気扇からもれる油で建物全体が汚れます。Cさんのマンションも例外ではありません。
 油で覆われて薄汚れた外観、油っぽいエントランスや廊下、全部写真を撮ります。とにかく、汚い。

 Cさん宅は、汚部屋でした。ゴミがあふれていました。おばあちゃんちの臭いがしました。
 街金にお金を借りに来る人は、生活よりもお金のことで頭がいっぱいなのか、身なりや住まいに無頓着になってることが多いです。

 それにしても、Cさん宅、本当に内装業者なのかと疑うくらい、荒れています。フローリングのシミ、壁紙はところどころ剥がれて、破れて。
 靴を脱いで上がりたくない部屋に入り、写真を撮ります。息を止めて写真を撮ります。帰り道、コンビニに寄って靴下を新調します。
 
 汚部屋の改装費用を計算して、Cさん宅の査定からそれをさっぴいた金額を貸すことになりました。月々9万円の利息を1年間払ってもらいます。元本は最後の支払日に一括で返してもらいます。

「じゃあ、Cさん、これから毎月よろしくお願いしますね。こちらからも電話しますけど、利息の支払い忘れないでくださいね」
「はいはい、どうもありがとうございます。助かりました。本当にこれをご縁に……」

 どこまでもCさんは低姿勢です。

次のページ利息日3回めに振り込まれず・・・

KEYWORDS:

テツクルさんがマンガになった!
【マンガ版】『ぼく、街金やってます』
第5話 弱肉強食! ザギンでシースー!

https://kkbestsellers.net/n/nb73e77cce164

『ぼく、街金やってます: 悲しくもおかしい多重債務者の現実』
著者:テクツル

 

Amazonで購入

東京・池袋で街金を営む著者のもとには、さまざまな多重債務者がやってくる。そして返すあてもないまま借金を重ねていく。そんな彼らの、悲しくも爆笑せずにはいられないさまざまなエピソードを面白おかしく、しかし赤裸々に、街金ならではの視点で紹介。

ほかにも、ブローカー、詐欺師、悪徳業者、反社など、日常生活では出会うことのない人々が続々登場。今まであまり語られることのなかった街金コラムも満載。あなたの知らないお金の世界が見えてくる!

オススメ記事

テツクル

てつくる

金融業

20代より金融業に携わる。福岡と東京で修行し、現在、池袋で金融業(街金)を経営。この道20年を超えるベテランで、自分が金融業に入るきっかけを書いた自叙伝『ぼくと街金』(note)が好評を博す。Twitterアカウント:@tetukuruixi


この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

ぼく、街金やってます: 悲しくもおかしい多重債務者の現実
ぼく、街金やってます: 悲しくもおかしい多重債務者の現実
  • テツクル
  • 2019.08.02