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【街金は見た!】街金が絶対にお金を貸せない条件《逃げる債務者、回収する債権者の知恵くらべ》

【テツクル半生記】あのころ、ぼくは、若かった。Vol.6

◼︎5万円で反社の看板を外させた債務者

 え? あれ?
 この前来たときに見落としたかな? 撮影した写真を見直したけど、看板の影も形もありません。このご時世、こんな看板持って引っ越して来られるわけもなく。
 突如現れた反社の看板。Cさんに確認しなきゃなりません。

 ピンポーン。
「あ、え、テツクルさん……どうしたんですか……」
「ちゃんと払ってくれないから来ちゃったよ」
「すいません、すいません、せっかくのご縁なのにすいません」
「そういうのいいから、利息は?」
「ごめんなさい、明日には必ずなんとかしますんで……」
「現金ないんじゃねーか」
「大切なご縁を……」
「あのさ」
「はい……」
「ご縁はいいんだけどさ、あれ何?」

 ぼくは看板を指して聞きました。

「はぁ……よくわかりません……」
「反社の看板だろ」
「そうですか?」
「いやいや、どう見てもそうだろ。こないだ来たときはなかったよね?」
「そうですかね?」
「Cさん、何か隠してるでしょ」
「こんなご縁で助けていただいてるテツクルさんに隠しごとするわけないじゃないですか……」
「顔、踏んでもいい?」
 
 詰めるぼく。逃げるCさん。
 でも、結局白状しました。
「実はですね……テツクルさんが来る日、頼んで看板外してもらったんです……」
「は?」
「だって……看板あったら貸してもらえないでしょ?」
「当たり前だろ」
「そうだと思いまして……」
「どうやったら外してもらえるの?」
「相談しに行ったら、5万円で1日外してやると言われまして……」

 実は、その組織はそれほど大きなものではないらしく、しかもCさん宅の並びの部屋はお泊まり当番のお兄さんしかいない部屋で、Cさんの相談をきいたお兄さんはちょっとした小遣い稼ぎを思いつき、一時的に看板を隠すことに協力してくれたとのことでした。
「せっかくのご縁を……」
「Cさん、もういいからさ、家売って返してよ。買ってくれる人、紹介するからさ、家賃払えばこのまま住めるようにしてあげるよ。リースバックっていうんだよ」
「え、いや、それは……」
「じゃ、いま利息払えよ」
「あの、明日には必ず……」

 結局Cさんは自宅を手放し、新オーナーに家賃を払って住み続けることで決着しました。でも、並びに反社が立派な看板を掲げている家が簡単に売れるわけがありません。

 そこで、中国人の投資家をCさんに紹介しました。中国人って、反社とか気にしない人が多いんです。
 中国人投資家がCさんに払う売買代金から貸したお金を回収して、ぼくとCさんのご縁もここまでです。
 
 後日談ですが、Cさんの部屋を買った中国人、汚部屋に住むCさんのことを不憫に思ってか、部屋のリフォームをCさんに依頼しました。なのに着手金を払った直後、Cさんは大量のゴミを部屋に残して失踪したそうです。

 当然、中国人はちょう怒ってぼくに電話してきましたが、しばらくすると、自分でリフォームをはじめたようで、楽しそうにその様子の写真を送ってきました。
 趣味が増えてよかったね。

 

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金融業

20代より金融業に携わる。福岡と東京で修行し、現在、池袋で金融業(街金)を経営。この道20年を超えるベテランで、自分が金融業に入るきっかけを書いた自叙伝『ぼくと街金』(note)が好評を博す。Twitterアカウント:@tetukuruixi


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  • 2019.08.02