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「青春18きっぷ」一枚あればピンチもヘッチャラ!?【女子鉄ひとりたび】3番線

裕子流鉄道旅に同行すると、日本が愛おしくなる。~宮脇灯子~


元祖鉄道アイドル、今は「鉄旅タレント」として鉄道をアツく語る、木村裕子が日本各地の魅力的な路線を紹介する“女子鉄ひとりたび”。今回は青春18きっぷの消化旅行を兼ねて、千葉県の観光路線「JR内房線」の那古船形駅をレポート!(『女子鉄ひとりたび』著 木村裕子 より)


■真の仏さまはお寺のそとにいた

 前回の≪女子鉄ひとりたび≫2番線では「青春18きっぷ」がいかに偉大であることを述べたが、その具体的なエピソードがあるので紹介したいと思う。
 ある年の春の18きっぷシーズン最終日。最後の1回分消化旅として、都内から日帰りで行けるJR内房線の那古舟形(なこふなかた)駅へ向かった。私は鉄道と同じくらい神社仏閣ファンでもある。
 かねて気になっていた、レアなロケーションにある「崖観音」(がけかんのん)と呼ばれる船形山大福寺(ふなかたさんだいふくじ)へ訪れるためだ。このお寺のお堂は山の中腹の断崖絶壁に建てられており、崖には十一面観世音菩薩(じゅういちめんかんぜおんぼさつ)が彫刻されている。訪れた人は一様に「よくぞ、こんな場所にお寺をつくったものだ」と嘆息するという。
 朝7時。18きっぷを持って自宅を出発。目的地までの3時間は、お得意の妄想と駅名ダジャレで過ごす。那古舟形駅は小さなローカル駅で、ホームに降り立つと潮の香りがした。東京から近いのに、ずいぶん遠くに来たような気分になる。
 15分ほど歩くと大福寺に到着。そのすぐ手前に可愛らしい雑貨屋さんを見つけた。このお店では、廃棄された船の材木を加工して、オシャレな雑貨として棚に並べていた。
 おみやげに1つ選び、レジでリュックを開けてパニックに陥る。
 なんと、財布を忘れて来てしまった。乗り鉄歴15年、こんなことは初めてだ。私は「リアル・サザエさん」か!
 財布がないことを説明し、謝罪して商品を戻す。しゅんと肩を落としてお店を出ようとすると、店主から「今から海へ行くけど一緒に行くかい? そこで貝殻のお土産を拾おう」という、ありがたすぎるご提案をいただいた。しかも車で連れてってくださるという。現金のないこの日の私には、この上ない話だ。一も二もなく承知したのだった。
 砂浜の海岸では、店主の知り合いの漁師さんたちが迎えてくれた。

お世話になった那古船形の漁師の皆さん

 事情を聞いた漁師さんらは、
「アクセサリー加工用の貝殻をあげるよ」
「じゃあ俺はウニの殻をやろう」
「採ったばかりのワカメ食って元気だせ」と、次々にプレゼントを差し出してくれる。リュックの中が、お土産でいっぱいになった。
 物々交換の始まりとなるワラすら持っていない私が、「わらしべ長者」よりも恵まれているという展開で申し訳なさに支配されるが、それを上回るほどの優しさが身に染みていく。
 この漁師さんたちは漁に出た日は海岸でバーベキューをやっているとのことで、「つぎ来た時も俺たちに声をかけてね。次回は海鮮バーベキューだ」と、なんとも嬉しいことを言ってくださった。人のありがたみを改めて再認識して、何度もお礼を伝えて後にした。

 車で崖観音の入口まで送っていただいて、参拝へ向かう。
 お堂からは相模湾と大島が一望できて、さっき行った海岸も見下ろせた。海がいつもにも増してキラキラと輝いているように見える。1円玉すら持っていないため、無銭参拝となってしまったが、この町を見守る仏様に改めて感謝とお礼を伝えた。

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■水間鉄道に「女子鉄ひとりたび」ヘッドマーク電車走った!

掲出日程:2020年1月11日~1月20日(10日間)
掲出車両:1003(青ライン/貝塚駅側)
走行日:1月15、16、18、19、20日

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木村 裕子

きむら ゆうこ

タレント

元・鉄道アイドル。現・鉄旅タレント。

愛知県名古屋市出身。所属事務所はオフィス北野→マセキ芸能社。 幼少期から鉄道が好きで、元JR車内販売員を経て、元祖鉄道アイドルとしてデビュー。2015年に日本の鉄道全線完乗を達成。国内旅行業務取扱管理者の資格を持ち、カルチャースクールで講師も務める。

現在は「アメトーク(テレビ朝日)」出演など、テレビやラジオなど幅広いメディアで活躍中。


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