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【緊急寄稿】子供を性被害から守るために、私たち大人がすべきこと

―知識は力になる―

■「どうして大人は教えてくれなかったのか」と言われないために

 私たちおとなは、身近にいる子供たちの様子を見守りながら、家庭では「適切な愛情表現」を伝えるとともに、広く学校教育でどのような行為が不適切か、どのような対処をすべきかを正しく伝えていくことが必要である。「公園のベンチでいつも座っているおじさん」は、最初は「知らない人」でも、笑顔で近寄られてつい話し始めてしまったら、それが数回続いた時点でもうその人は「知ってる人」になってしまったりする。「知らない人にはついていかない」と教えるだけでは、子どもたちの安全は守れないのだ。

「こういう話は、もっと早く聞きたかった」と子供たちに言われて手遅れにならないうちに、性暴力の加害者にも、被害者にも、傍観者にもしないための学校における予防教育を、政府が本腰を入れ、全ての子供たちに対して一日も早く始めてほしい。


脚註)
【1】子供への暴力防止教育プログラムCAP(Child Assault Prevention)では、一人ひとりが大切な存在であるという基本的人権と、性的な被害に加え、いじめ、知らない人からの連れ去りといった子供を取り巻く暴力から身を守る方法をロールプレイを使って分かりやすく教えてくれる。(「J-CAPTA」http://j-capta.org/「CAPセンター・JAPAN」 http://cap-j.net/

【2】“1 is too many.”は、性暴力を尊厳の問題と位置付け、国民一人一人が根絶に参画するよう呼びかける公共広告として米国のオバマ前大統領が著名な俳優陣とともに出演し、ホワイトハウスのYouTubeサイトにアップした「1 is 2 Many PSA: 60 Second」の中で俳優のダニエル・クレイグによって語られた言葉。(https://youtu.be/xLdElcv5qqc

【3】「なぜ日本の性教育は“セックス中心”なのか 日本とは全然違うフランスの教え方」(『PRESIDENT Online』2019/07/02 9:00 https://president.jp/articles/-/29133

【4】「児童の性的搾取等に係る対策の基本計画~児童の未来を守る社会のために~」(平成29年4月18日 犯罪対策閣僚会議決定)

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小笠原 和美

おがさわら かずみ

慶應義塾大学教授(専門:社会安全政策、性暴力、ジェンダー)

1994年警察庁入庁。2011年福島県警警務部長、2012年警視庁広報課長、2016年北海道警察函館方面本部長など、全国各地の警察で勤務する中、10年程前から性暴力対策に取り組んでおり、医療機関を拠点とする性暴力被害者支援スキームや、子どもを性被害から守るための協議会の発足など、地元の様々な立場の人や組織と連携して、地域の力で被害者や子供たちを守る仕組みをプロデュース。様々な事例を通じて「知識は力になる」と確信、小学校から大学まで、子供達に「大切なあなたへ~大切な心と体の守り方~」を伝える活動や全国各地で大人向けの講演活動も行っている。CAP(Child Assault Prevention)スペシャリスト(J-CAPTA)。

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