【緊急寄稿】子供を性被害から守るために、私たち大人がすべきこと | BEST TiMESコラム

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【緊急寄稿】子供を性被害から守るために、私たち大人がすべきこと

―知識は力になる―

■性暴力を、なくそう

 本年6月11日、内閣府・警察庁・法務省・文部科学省・厚生労働省の局長級からなる「性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議」が「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」(以下、「強化方針」という)を決定した。
「性暴力を、なくそう。」この句読点入りの10文字は、強化方針を決定した会議の議長を務めた内閣府特命担当大臣(男女共同参画)のメッセージに掲げられた言葉である。メッセージの中で同大臣は、「性暴力はあってはならない」という認識を社会全体に広げていくことが何より重要であり、「性暴力は一つあるだけでも多すぎる」(1 is too many.)という認識の下、性暴力のない社会、誰一人取り残さない社会の実現に向けて全力を尽くすという決意を述べ、国民に理解と協力を求めている(巻末脚註【2】参照)。

 今回示された強化方針の項目として画期的な点は、性犯罪・性暴力を根絶していくため、加害者にならない、被害者にならない、傍観者にならないための教育と啓発を行うことを内容とした「教育・啓発活動を通じた社会の意識改革と暴力予防」が盛り込まれたことである。

 中でも注目すべきは、「学校等における教育や啓発の内容の充実」という項目に、性暴力の加害者や被害者にならないための施策の例示として、

 ●幼児期や小学校低学年で、被害に気付き予防できるよう、自分の身を守ることの重要性や嫌なことをされたら訴えることの必要性を幼児児童に教える(例えば、水着で隠れる部分については、他人に見せない、触らせない、もし触られたら大人に言う、他人を触らないなど、発達を踏まえ、分かりやすく指導する等)。

 と示された点である。

 この「水着で隠れる部分」は、まさに「プライベートゾーン」のことであり、性的な被害から自分の身を守るための分かりやすい伝え方として、海外では児童向けの性教育に取り入れられている(巻末脚註【3】参照)。しかも、「他人のプライベートゾーンを触らない」ことも教えることで、他者との適切な境界線を知ることにもなり、性的に不適切な行為を自制することにも繋がる上、仮に学校内で(スカートめくりやズボン下ろしなど)不適切な行為があった場合に、教員側が「プライベートゾーン」の概念を用いて指導もしやすくなる。

 日本政府はこれまで、幼い子供たちを性的な対象として搾取しようとする者から子供たちを守るため、様々な対策を講じてきているが(巻末脚註【4】参照)、子供たち自身に向けて直接「自分の体をどう守るか。守り切れなかった場合にどうしたらよいか。」を教えるという対策は講じてこなかった。しかしこのことは、今最も早急に手を付けるべき対策である。この知識を身に付けることにより、防げる被害・加害が必ずあるからである。

■私たち大人がすべきこと

 ◆ 子供の普段の様子をよく見て、変化に気付く
 性被害に遭っている子供たちは、急に元気がなくなったり、外出することを嫌がったり、自分や他の子の性器を触ったりするなど、様々なSOSを出すようになるが、周囲の大人がその変化の意味を理解していなければ見過ごされてしまう。まずは、普段の子供の様子をよく見て、変化に気付けることが大切だ。

 ◆打ち明けられたら「話してくれてありがとう」
 被害に遭ってしまった時にどう対処したらよいかは、被害に遭う前に知っておかなければ迅速な行動にはつながらない。被害について相談されたときにどう対応したらよいかも同じで、打ち明けられる側において対応を間違えると、心身共に傷つけられている子供の心を更に傷つけてしまう。

 特に我が子など、自分にとって大切な存在である子供が被害に遭ったと知ったとき、親は大きく動揺し、場合によっては目の前にいる子供に対して、「どうして会いに行ったのか」などと責めるような言葉をかけてしまうことがある。あるいは(当たり前の反応だが)大きく嘆いたり、ショックに打ちのめされてしまったりする。するとそのことが、「言ってはいけないことだったんだ」というメッセージとなり、子供たちの口を閉ざしてしまうことにも繋がってしまう。

 実は、「被害に遭った」ということを打ち明けることは、それが子供でも大人でも、とてつもなく勇気が必要な行為である。したがって、驚いたり嘆いたりする気持ちが湧き上がってきたとしても、まずは一旦深呼吸をして、「話してくれてありがとう。」と伝えてあげてほしい。この言葉は、打ち明けた人の気持ちだけでなく、話を聴く側の気持ちも落ち着かせてくれるはずだ。

 ◆ 「どんなことがあってもあなたの味方」は子供のお守り
 普段と様子が違うのは、性被害だけではなく、虐待やいじめなどが原因の可能性もある。いつもとちょっと違うわが子の様子を見た時、少し覚悟を持ちながらも、「何か心配なことでもあるなら、何でもお話しして」「どんなことがあっても、あなたの味方だよ」と声をかけてほしい。そういう言葉を待ち望んでいる子供が必ずいるはずである。そしてできれば、この言葉は、子供への「お守り」として、折に触れかけてあげてほしい。安心して相談できる大人が身近にいるということが、子供たちの自尊心にも繋がり、いざという時に適切な対処を選べる力になる。

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小笠原 和美

おがさわら かずみ

慶應義塾大学教授(専門:社会安全政策、性暴力、ジェンダー)

1994年警察庁入庁。2011年福島県警警務部長、2012年警視庁広報課長、2016年北海道警察函館方面本部長など、全国各地の警察で勤務する中、10年程前から性暴力対策に取り組んでおり、医療機関を拠点とする性暴力被害者支援スキームや、子どもを性被害から守るための協議会の発足など、地元の様々な立場の人や組織と連携して、地域の力で被害者や子供たちを守る仕組みをプロデュース。様々な事例を通じて「知識は力になる」と確信、小学校から大学まで、子供達に「大切なあなたへ~大切な心と体の守り方~」を伝える活動や全国各地で大人向けの講演活動も行っている。CAP(Child Assault Prevention)スペシャリスト(J-CAPTA)。

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