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米大統領選挙における本当の敗北者はメディアだ

グローバリズムの終焉Ⅰ日本が“真”の独立をするときが来た②

トランプ政権発足、イギリスのEU離脱。2016年の二つの出来事は「グローバリズム」の敗北であり、「ナショナリズム」の勝利である。『グローバリズムの終焉「日本再発見」講座Ⅱ』を刊行、馬渕睦夫氏がグローバリズムの欺瞞と危険性を暴く!

負けたのは日米のマスメディア

 

 先の米大統領選では、アメリカのメディアもアメリカの日本のメディアもずいぶんひどいことを言っていましたね。トランプ氏を最後までけなしていましたから。
「トランプは大統領になっても絶対に上手くやれるはずがない」と言わんばかりの調子で、連日報道していた。そして、結果が出た今になっても「なぜ自分たちが予想を外したのかわからない」と言っている始末です。
 これはずいぶん無責任な言い方だと思います。それはメディア自身が真実をあえて見ようとしないからでしょう。これはアメリカのメディアだけではありません、日本のメディアもあえて見ようとしないのです。
 メディアは最初から、「トランプは暴言者で、差別主義者で、中傷ばかりしている」と決めつけていました。アメリカのメディアは上から下まで、右から左まですべて「トランプは大衆迎合主義者」と報じていた。もちろん、日本のメディアも同様でした。右から左まで、すべて同じラインで報道していたのです。
 それどころか、日米のメディアはどこも「なんとかヒラリーに大統領になって欲しい」いう思いが色濃く出ていました。
 それよりも驚いたのは、テレビのなかでもいわゆる「反日」と言われるチャンネルのコメンテーターが「トランプが大統領になったら、日米の軍事同盟が壊れるかもしれない。これは大変だ!」と言っていたことです。左系のテレビがそう言っている。去年の安保法制をクソミソにけなしたテレビのコメンテーターが同じ様に言っていたのを思い出しました。
 日本のメディアは、ここまで劣化してしまっているのです。今回の大統領選挙を、正確に見通せなかったのは当然です。
 私は、今回の米大統領選というのは、世界的なグローバリズム対ナショナリズムの戦いだったと思います。イギリスがEU離脱の国民投票を行いましたがそのときの争点と同じなのです。
 あのときも世界のメディアは間違えました。「EU残留派が勝つだろう」と最後まで希望的観測を捨てずにいました。現実を見ずに、自分たちの希望が当然投票行動に現れてしかるべきだという、まさに上から目線の報道ばかりでした。
 メディアはいつも、自分たちが正しい、だから自分たちが良いと思う方向で投票すべきだと報道します。それでも、メディアはイギリスで負け、アメリカでも負けました。もちろん大統領選挙における敗北者はヒラリー候補ですが、本当の敗北者はアメリカのメディアなのです。

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馬渕 睦夫

まぶち むつお

元駐ウクライナ兼モルドバ大使、元防衛大学校教授、現吉備国際大学客員教授。

1946年京都府生まれ。京都大学法学部3年在学中に外務公務員採用上級試験に合格し、1968年外務省入省。

1971年研修先のイギリス・ケンブリッジ大学経済学部卒業。2000年駐キューバ大使、2005年駐ウクライナ兼モルドバ大使を経て、2008年11月外務省退官。

 同年防衛大学校教授に就任し、2011年3月定年退職。2014年4月より現職。

 金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。

 著書に、『国難の正体』(総和社)、『世界を操る支配者の正体』(講談社)、『日本「国体」の真実』(ビジネス社)、『そうか、だから日本は世界で尊敬されているのか! 』(ワック)などがある。


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