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ミサイル以上に怖い、北朝鮮特殊部隊の存在

『韓国左派の陰謀と北朝鮮の擾乱』 第5回

韓国が赤化消滅する日は来るのか――元韓国国防総省北朝鮮情報分析官であり、元外務省主任分析官である佐藤優氏との緊急対談した『韓国左派の陰謀と北朝鮮の擾乱』を上梓するなど、朝鮮半島情勢に詳しい高永喆(コウ・ヨンチョル)氏に、今後の動きをどうみるのか、情報分析のプロの視点から話をしていただいた。

総兵力 117万人の脅威

 北朝鮮の総兵力は117万人です。そのうち陸、海、空合わせて13万人規模の特殊部隊が確認されています。日本の自衛隊の兵力が13万人くらいですから、それとほぼ同じ規模の特殊部隊を運用しているわけです。

 ですから、在韓米軍司令官が毎年、「本当に怖いのは北朝鮮の核兵器ではない。核兵器は抑止力の武器だから使わない。有事の際、実際に使われるのは特殊部隊だ」とアメリカの国会聴聞会で証言しているのです。

 陸、海、空に分けられた北朝鮮の特殊部隊は高給で、様々な福祉支援と特別手当があてがわれます。当然、士気も高くなります。だからこそ北朝鮮特殊部隊は、アメリカの特殊部隊であるグリーンベレーやデルタフォース、海軍特殊部隊UDT/SEALチームに比べても遜色のない怖い存在だといわれているのです。

 金正恩は、この特殊部隊を使って局地戦を仕掛けてくる可能性があります。北は朝鮮戦争を含め、絶えない対南軍事挑発を繰り返してきました。

「挑発」→「対話」→「対話決裂」→「再挑発」→「対話再開」を繰り返しながら、これまでも国家利益を追求してきたのです。

 しかし、北朝鮮は、全面戦争には踏み切らないでしょう。なぜなら、現状では中国の後ろ盾が期待できないからです。そうなると、いまの北朝鮮の国力では難しい。

 そこで北朝鮮は、局地戦を仕掛けることで、全面戦争の可能性があることを、ちらつかせながら、アメリカやロシア、中国から利益を引き出そうとするかもしれません。

 しかし金正恩は軍隊経験がないので、戦争の本当の恐ろしさを知りません。可能性は低いと思いますが、全面戦争に踏み切ることも否定できません。

 また、その影響は、日本にも及ぶことが考えられます。私の以前の著作『北朝鮮特殊部隊 白頭山3号作戦』でも書きましたが、日本国内に特殊部隊を潜入させて、港湾施設やガス・石油備蓄施設、送電網などのインフラを破壊するのです。ほかに首都東京の主要な鉄道網や高速道路などを妨害すれば、一瞬にしてパニックになります。そしてもっと恐ろしいのは、原子力発電所の占拠、破壊工作です。

 2011年3月の東日本大震災の福島第一原子力発電所の損壊を見ても分かる通り、原発に対して破壊工作が行われると、甚大な被害が出ます。電力関係者の話によると、通常のミサイル攻撃くらいでは壊れないように作られてはいるようですが、軍隊にいた私からすると、警備が非常に手薄なのが気になります。警備員は拳銃すら持っていない一般のガードマンです。

 武装した北朝鮮の特殊部隊は、簡単に警備を突破して潜入できます。そして内部から破壊してしまえば、大きな打撃を与えることができます。

 また、首都に直結するダムは最も危険です。韓国では軍隊が水源地を守り、外国勢力やテロリストが化学物質や細菌を投入して汚染されないようにしていますが、日本は全く何もしていません。原発よりも狙いやすいといっていいでしょう。

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高 永喆

コウ ヨンチョル

拓殖大学客員研究員、韓国統一振興院専任教授、元韓国国防総省北朝鮮分析官。

1953年、韓国全羅南道に生まれ。1975年韓国朝鮮大学卒業(奨学生)、同年海軍将校任官、海軍大学卒業(正規18期)。

駆逐艦作戦官を経て第2艦隊特海高速艇隊長、済州道防衛司令部情報参謀、海軍士官学本部隊長、国立海洋大学・海軍教育団(ROTC)教官・副団長を歴任。

1989年からは、国防総省北朝鮮分析官(専門委員)、同日本担当官(防衛交流)を務める。

1993年、金泳三政権の軍部粛清により、全斗煥、盧泰愚の元大統領及び軍政治団体ハナ会らとともに逮捕。その後、金大中大統領の特別赦免・復権を受ける。

1999年12月に来日。以降、テレビ、新聞、週刊誌に北朝鮮問題解説、特講、講演を通して韓日友好に寄与中。

共著に佐藤優氏との『国家情報戦略』(講談社)、ほか『亡国のインテリジェンス』(文芸社)などがある。


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  • 2017.03.25