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学校再開によって増加する教員の負担と感染リスク

第27回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■教員の感染リスクよりも不満の抑制

 しかし、新型コロナは収束したわけではない。39県で緊急事態宣言が解除された5月14日、文科省は丸山洋司初等中等教育局長名で「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における『学びの保障』の方向性について」という「通知」を全国に示している。

 「緊急事態措置の対象から外れた地域も含め、学校における感染拡大のリスクがなくなるものではなく、引き続き万全の感染症対策を講じていただく必要がありますが、同時に、社会全体が、長期間にわたり、この新型コロナウイルス感染症とともに生きていかなければならないという認識に立ちつつ、子供たちの健やかな学びを保障することとの両立を図っていくことが重要です」

 つまり、新型コロナとともに生きていく「覚悟」を求めているのだ。

 3密回避を強く求めているのだが、それには分散登校、そして分散授業の長期化、もしくは、それを常態化する必要がある。にもかかわらず、学校設置者である自治体は、先に述べたように、分散登校を短期で終了する方針を早々と表明している。

 新型コロナ以前の学校生活に早々に戻せば、感染のリスクは高くなるはずである。子どもたちだけでなく、教員も感染のリスクを覚悟しなければならない。

 そこを考えてなのか、ある自治体の教育委員会は、「子どもから大人への感染」や「子どもから子どもへの感染」は「極めて少ない」という学説を学校にわざわざ連絡して、強調している。子どもから教員に伝染ることはないし、子ども同士で感染することもないから、安心して学校を再開しろ、というわけだ。

  

■教員を過重労働と健康被害から守るべき

 しかし、それが本当ならば、そもそも休校にする必然性はなかったことになる。厚生労働省も「子どもの感染例は少ない」としながらも、「現在分かっている情報では、子どもは感染しても症状が出ない、あるいは症状が軽いことが多いと報告されています」としている。子どもから大人への感染や、子どもから子どもへの感染は「ない」とは言っていない。今回の再開の動きも、そうした学説を理由にしているわけでもない。

 低リスクを強調するのは、リスクに対して教員から不満の声がでてくるのを抑え込もうとの意図があるのではないだろうか。逆に言えば、リスクはあるということである。だから、手洗いやうがいの徹底や、入念な清掃・消毒を指示している。

 学校再開は教員に対して、休校によって失われた時間を取り戻すためのハードワークだけではなく、新型コロナの感染リスクがある環境で働くことを強制することに変わりはない。

 学校を再開するなら、子どもたちはもちろんだが、教員や職員のリスクには充分に配慮があって当然である。それを疎かにして、「再開ありき」で無理の上に無理を積み重ねつつあるのが現状のような気がする。その無理による負担は、まちがいなく教員にのしかかってくる

 教員に無理を強いても、学校再開を文科省も自治体も急ぎたいのだ。教員のことは二の次でしかない。こうした文科省や自治体の姿勢で、はたして教員の働き方改革は進んでいくのだろうか。新型コロナ禍でうやむやにしてはならない。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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