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コロナ危機での各国政府の巨額財政負担は大丈夫なのか?

アメリカ310.8兆円、日本78.7兆円…MMTは正しいのか!?

◼️どんな経済政策でも庶民にとっては胡散臭い

 どっちみち、庶民にとっては、古典的自由経済政策だろうが、社会主義政策だろうが、緊縮財政政策だろうが、新自由主義(と通常呼ばれる経済思想と「新自由主義と呼ばれる現象」とは別であるという説もあるが)政策だろうが、MMTだろうが、胡散臭い。

 古典的自由経済の「見えざる手」によって市場が均衡するから自由放任主義でいいという説など実にファンタジーだ。ほんとうに市場が自由であったことなどない。自由市場と同じく自由競争などというものは、人類は経験したことがない。永遠に自由市場も自由競争も実現しないのではないか。

 社会主義政策の計画統制管理経済政策は、ソ連でも中国でも失敗した。計画どおりの生産性は上げることができなかった。一部の支配的特権層以外の大多数の人間は平等に困窮しただけだ。

 緊縮財政政策など、為政者や為政者の立場を利用して私利私欲を追求する人々のための予算が拡大し、利権を持たない人々の暮らしに関する予算が削減されるだけなのではないか。

 新自由主義政策はどうか? モノと人とカネが国境を超えるグローバリズムとともに1980年代から各国で採用された新自由主義政策により、企業は低賃金を求めて外国に生産拠点を移し、国内産業の空洞化を招いた。イノベイションによって良い製品を開発し生産し売る産業資本主義ではなく、奇妙な類の資本主義を跋扈させた。コンピューターの1秒以下の単位の操作で株の売買することによって利ザヤを得るサイバー資本主義や金融資本主義とか。リストラによる人件費削減によって見せかけの利益を計上し株価を吊り上げ、それによって得た利潤は株主に配分され、研究開発費や労働者の賃金は抑止される類の株主資本主義とか。

 そして、MMTとなると、そもそも賢人政治的期待を政府は満たすことができるのかと、私は不思議になる。政府も不完全な人間の集団に過ぎない。

 MMTにおいては、税は景気の調節機関であり、デフレになったら、「租税を軽くして需要を減らせば通貨の価値が下がってインフレ圧力が発生」(前掲書52)させ、「増税すればデフレ圧力を発生」(前掲書52)させることができる。ハイパーインフレが起きそうになったら、増税する。そうすれば、国民の保有する貨幣量が収縮し、需要が収縮し物価は下がる。

 このように自在に通貨を発行し、もしくは発行しないことによって、市場をコントロールできるのならば、言うことはない。それこそ、社会主義も驚くような完璧な統制計画管理経済政策だ。

 しかし、為政者や官僚や経済学者が、市場をコントロールできるくらいに有能ならば、なぜ大恐慌は周期的に起きてきたのか? それは、政治家や官僚や経済学者がMMTについて無知だったからなのか? 過去の賢人たちに盲点があったのならば、MMTを支持する現在の政治家や官僚や経済学者たちにも盲点があるのかもしれない。

 どちらにしても、どのような経済思想の立場からにせよ、経済政策が実行され、庶民がそれらに翻弄されるという点については同じだ。その観点から、どう考えてもMMTに影響されたらしきコロナ危機に対処する各国政府の大盤振る舞い的財政出動の成果と波及効果に、私は興味津々だ。今度は、どのように翻弄されるのだろか?

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。

 

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