出版局長が脳梗塞で半身不随になって経済的に困ったこと・業務に関わるうえでの悩みなど【真柄弘継】連載第8回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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出版局長が脳梗塞で半身不随になって経済的に困ったこと・業務に関わるうえでの悩みなど【真柄弘継】連載第8回

【連載】脳梗塞で半身不随になった出版局長の「 社会復帰までの陽気なリハビリ日記」163日間〈第8回〉

 

②負の感情は無くなった?

 

◾️9月14日日曜日

今日はオフの日だから朝の自主トレとリハビリ以外は運動をしない日。

リハビリの合間は競馬と、この日記を書くこと。

 

これまで何度も「不安」「焦り」「怒り」「苛立ち」などの負の感情がなくなったと言ってきた。

これは私自身に負荷を与える感情。

「怒り」や「苛立ち」のような他人へ向かう感情はなくなっているから、腹が立つことを言われても以前のような瞬間湯沸かし器にならない。

けれど最近になって、あら?意地悪な感情はあるじゃん!と気がついた。

 

会社を休職しているため部下に頼んで私宛のメールには、休職の旨と営業部共通アドレスを添えて返信してもらっている。

それでも個人アドレスにしか送ってこない人が何人かいる。

部下もいちいち私のメールをチェックしなくてはならず、面倒臭いことこのうえない。

だいたい病気療養で休職している人に対して、月毎の売れ行き報告と内容を確認したら返事をしてほしいなんてメールをしてくる人間の常識の無さに呆れる。

そんな人に、

「どういう了見を持っているんだ! 病気療養で休職してる取引先の社員に対して業務メールするなんて! それがストレスで療養にならないじゃないか!」

と先方の会社の法務部へ電話しようかと思ったりもする。

「なんならしかるべきところへ通報しようか?」

一言添えたりもするかな。

このような意地悪な感情は健在なのだ。

会合の幹事をしていたから、出欠のメールが私に届く。

それを幹事の代理を頼んだ人に転送するため、すぐには自動返信設定が出来なかったのだ。

私と連絡がとれると思う人がいても仕方がない面はある。

頭の障害で怒りがなくなっているからか、執着心もなく、まっいいか、となるから不思議だ。

セラピストさんとも、高次脳機能障害ではなく脳機能特典と呼んで楽しんでいるのだが(笑)

 

なんとなく今日は日曜日らしい雰囲気をリハビリテーション病院も醸し出している。

たぶん普段よりも多くの面会の人たちが来ていたのと、いつもより早くトレーニングルームが終了したからかもしれない。

リハビリも全部終わり、あとは夕食を食べたら、日曜日のルーティンである足湯をして、20時前には就寝。

今日1日の休息で明日からまた身体の機能回復に全力投球。

あと66日のリハビリでどこまで回復できるのか?

神のみぞ知る、である。

次のページ会社の仕事はどうしていたのか?

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真柄弘継

まがら ひろつぐ

現役出版局長

1966年丙午(ひのえうま)126日生まれ。

1988年(昭和63)に昭和最後の新卒として出版社に勤める。

以来、5つの出版社で販売、販売促進、編集、製作、広告の職務に従事して現在に至る。

出版一筋37年。業界の集まりでは様々な問題提起を行っている。

中でも書店問題では、町の本屋さんを守るため雑誌やネットなどのメディアで、いかにして紙の本の読者を増やすのか発信している。

 

2025年68日に脳梗塞を発症して半身不随の寝たきりとなる。

急性期病院16日間、回復期病院147日間、過酷なリハビリと自主トレーニング(103キロの体重が73キロに減量)で歩けるまで回復する。

入院期間の163日間はセラピスト、介護士、看護師、入院患者たちとの交流を日記に書き留めてきた。

自分自身が身体障害者となったことで、年間196万人の脳卒中患者たちや、その家族に向けてリハビリテーション病院の存在意義とリハビリの重要性を日記に書き記す。

また「転ばぬ先の杖」として、健康に過ごしている人たちへも、予防の大切さといざ脳卒中を発症した際の対処法を、リアルなリハビリの現場から当事者として警鐘を鳴らしている。

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