高市内閣誕生でついに底が抜けた「サヨクの劣化」と「フェミニスト・リベラルの幼稚さ」【仲正昌樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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高市内閣誕生でついに底が抜けた「サヨクの劣化」と「フェミニスト・リベラルの幼稚さ」【仲正昌樹】

衆院本会議で国民民主党の玉木雄一郎代表の代表質問に答弁する高市早苗首相(2025年11月5日)

 

 既に多くの人が指摘していることだが、どうして「私とは考え方はかなり異なるが、とにかく初の女性首相が誕生したことは歓迎する。高市内閣が実際にどういう政策を打ち出すか、これから注視して…」といった、余裕のある発言ができなかったのだろうか。批判は、具体的な政策が出てきてからでもいいのではないか、何を焦っているのか、と思う。この人たちは、自分たちが思ったような、更に言えば、自分たちをその道の先駆者として尊重してくれる女性リーダーでないと喜べないのか、という気がしてくる。

 高市氏をめぐるフェミニスト・リベラルの迷走はこれに留まらない。十月末のトランプ来日に際しても、高市氏の女性的に見える仕草をやり玉にあげ、福島党首は「ごますり、おべんちゃら」と決めつけ、有田議員は「日本の男社会を裏返しした権力構造が全世界に見られてしまった。アメリカの独裁者トランプ大統領への恥ずかしい媚びだった」と“論評”している。共産党の池上さおり元議員は、「現地妻」という下品な言葉さえ使った。極めつけは、東ちづる氏の「女性だからこそ、その業界では特に、媚びと過剰適応でのし上がってきたと想像できる」という言い方だろう。

 これらの発言が炎上したのは、保守派を中心に高市内閣への期待が高まっていたことに加え、貶している人たちが、東氏のような偏見に基づいて高市氏の振る舞いを観察しているように思えたこと、世の中で出世している女性が全て男に媚びていると決めつけているように見えること、そして、それを口にする女性たちへのブーメランになっていることなどによるのだろう。

 この人たちの発言は、たとえそれが女性の口から発せられたのだとしても、「女性蔑視」と言われている。もう少し細かく分析すると、この人たちは、東氏が言うような、(たいした実力もないのに)男に媚びること、女を売りにすることでのしあがる女性の一定のタイプが存在すると想定し、その「ステレオタイプ」を、自分から見て気に入らない女性に押し付けているのである。フェミニストぶっているくせに、ジェンダー・ステレオタイプに囚われているのである。

 そういう「媚びる女性」がいるという印象を、私も持っていないわけではないが、根拠もなくそれを特定の女性に押し付けたりしないし、ましてや公に発言したりしない。フェミニストや反差別活動家は、ジェンダー、人種・民族、職業などに関するステレオタイプが蔓延し、固定化することに反対するわけだが、東氏、池内氏、有田氏等は、自分の中のステレオタイプ、直感を全く疑問視することなく、不用意に、「トランプ氏の前で見せた高市氏の態度は、媚びて出世する女のそれの典型だ、間違いない」という偏見を披露してしまったのである。

 そういう「媚びる女性」のイメージのようなものが流布すると、それは特定のそれらしく見える女性だけでなく、女性全般の属性のように見なされる恐れがある。普段から、そういう言説の増幅作用を批判するのを仕事にしている人たちが、自ら粗雑極まりないやり方で、ステレオタイプを再認したのだから批判されて当然だ。

次のページ反高市発言で最も差別的意識を露呈させたのが立憲民主党議員の野次

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高市早苗著『アメリカ大統領の権力のすべて』

 

★初の女性新首相・高市早苗「政治家の原点」がここにある★

アメリカ大統領の権力のすべて』待望の新装重版

 

民主主義国家の政治をいかに動かし統治すべきか?

◎トランプ大統領と渡り合う対米外交術の極意とは?

★政治家・高市早苗が政治家を志した原点がここにある!

「日本は、国論分裂のままにいたずらに時間を食い、国家意志の決定と表明のタイミングの悪さや宣伝下手が災いし、結果的には世界トップ級の経済的貢献をし、汗も流したにもかかわらず、名誉を失うこととなった。

 納税者としては政治の要領の悪さがもどかしく悔しいかぎりである。

 私は「国力」というものの要件は経済力」、「軍事力」、そして「政治力」だと考えるが、これらの全てを備えた国家は、現在どこにも存在しない。

 (中略)

 そして日本では、疑いもなく政治力」がこれからのテーマである。

 「日本の政治に足りないものはなんだろう?」情報収集力? 国会の合議能力? 内閣の利害調整能力?  首相のメディア・アピール能力?  国民の権利を保証するマトモな選挙?  国民の参政意識やそれを育む教育制度?

 課題は随分ありそうだが、改革の糸口を探る上で、アメリカの政治システムはかなり参考になりそうだ。アメリカの政治にも問題は山とあるが、こと民主主義のプロセスについては、我々が謙虚に学ぶべき点が多いと思っている。

 (中略)

 本書では、行政府であるホワイトハウスにスポットを当てて同じテーマを追及した。「世界一強い男」が作られていく課程である大統領選挙の様子を描写することによって、大統領になりたい男や大統領になれた男たちの人間としての顔やフッーの国民が寄ってたかって国家の頂点に押し上げていく様をお伝えできるものになったと思う。 I hope you enjoy my book.」

(「はじめに」より抜粋)

◉大前研一氏、推薦!!

 「アメリカの大統領は単に米国の最高権力者であるばかりか、世界を支配する帝王となった。本書は、連邦議会立法調査官としてアメリカ政治の現場に接してきた高市さんが、その実態をわかりやすく解説している。」

ALL ABOUT THE U.S. PRESIDENTIAL POWER

How much do you know about the worlds’s most powerful person―the President of the United States of America? This is the way how he wins the Presidential election, and how he rules the White House, his mother country, and the World.

<著者略歴>

高市早苗(たかいち・さなえ)

1961年生まれ、奈良県出身。神戸大学経営学部卒業後、財団法人松下政経塾政治コース5年を修了。87年〜89年の間、パット•シュローダー連邦下院議員のもとで連邦議会立法調査官として働く。帰国後、亜細亜大学・日本経済短期大学専任教員に就任。テレビキャスター、政治評論家としても活躍。93年、第40回衆議院議員総選挙奈良県全県区から無所属で出馬し、初当選。96年に自由民主党に入党。2006年第1次安倍内閣で初入閣を果たす。12年、自由民主党政務調査会長女性として初めて就任。その後、自民党政権下で総務大臣、経済安全保障大臣を経験。2025年10月4日、自民党総裁選立候補3度目にして第29代自由民主党総裁になる。本書は1992年刊行『アメリカ大統領の権力のすべて』を新装重版したものである。

✴︎KKベストセラーズ「日本の総理大臣は語る」シリーズ✴︎

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仲正 昌樹

なかまさ まさき

1963年、広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。古典を最も分かりやすく読み解くことで定評がある。また、近年は『Pure Nation』(あごうさとし構成・演出)でドラマトゥルクを担当し、自ら役者を演じるなど、現代思想の芸術への応用の試みにも関わっている。最近の主な著書に、『現代哲学の最前線』『悪と全体主義——ハンナ・アーレントから考える』(NHK出版新書)、『ヘーゲルを超えるヘーゲル』『ハイデガー哲学入門——『存在と時間』を読む』(講談社現代新書)、『現代思想の名著30』(ちくま新書)、『マルクス入門講義』『ドゥルーズ+ガタリ〈アンチ・オイディプス〉入門講義』『ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義』(作品社)、『思想家ドラッカーを読む——リベラルと保守のあいだで』(NTT出版)ほか多数。

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