長嶋茂雄を超えたキムタク、新時代の芸能人・櫻井翔。そして、SMAPと嵐が国民的になれた理由【宝泉薫】「令和の怪談」(10)
「令和の怪談」ジャニーズと中居正広たちに行われた私刑はもはや他人事ではない(10)【宝泉薫】
そんな嵐に対し、昭和の熱気が残るなかで世に出たのがSMAP。こちらが国民的人気を得たのはやはり、木村拓哉の存在が大きい。出世作の『あすなろ白書』以降、数々のドラマで高視聴率を記録し、音楽面でもいちばん歌えるメンバーとしてグループを牽引。「最後の国民的スター」と呼ばれる彼なくして、SMAPの国民的グループ化はあり得なかった。
その、何かにつけて話題になるスター性は持って生まれた「天然キャラ」のたまものでもある。たとえば彼はかつて「キムタク」と呼ばれるのを嫌がり「キムタクのルーツを探して、2000年までに撲滅しよう」という企画を自分のラジオで展開したことがある。
しかし、リスナーから彼自身がデビュー直後「拓哉くんでーす。名付けて、キムタク」と自己紹介していたこと、それを3年くらい普通に使っていたという情報が寄せられた。彼は驚き、この企画をこう締めくくることに。
「公共の電波を使って、大々的に、募集してたわけじゃん。で、これがもしホントだったら、結局、犯人は俺でしょ? ってことは、俺、バカじゃん」
天然キャラ界のレジェンド・長嶋茂雄も顔負けのエピソード。大スターたるゆえんだ。
とはいえ、ジャニーズはグループのなかの誰かが突出して目立つことをよしとしない。雑誌などに対しても、グループ内格差が見えるような扱いは避けるように要請してきたりするのが伝統だった。
そこがSMAPでは有効に働いた。キムタクが突出したことで、他のメンバーのレベルアップが課題となり、それを推進した結果、大成功したからだ。リーダーの中居正広は司会業、稲垣吾郎は芸術路線、香取慎吾はコスプレ系で独自のポジションを獲得。最後に残った草彅剛も「いいひと」キャラでブレイクした。いちばん地味で目立たなかったことを逆手にとり、ギラギラガツガツしていない感じを売りにして好感を得たわけだ。これには当時の「草食男子」ブームも味方していた。苗字に「草」が入っているのも何かの縁だろう。
それぞれ自分の冠番組を持つ5人が週に一度集合して、豪華なゲストもまじえながらわちゃわちゃと遊ぶ『SMAP×SMAP』。あれはバブル崩壊後の日本で最も贅沢な国民的番組だった。
KEYWORDS:
✴︎KKベストセラーズ 待望の重版✴︎
『痩せ姫 生きづらさの果てに』
エフ=宝泉薫 著
人類の進化のスピードより、ずっと速く進んでしまう時代に
命がけで追いすがる「未来のイヴ」たちの記憶
中野信子(脳科学者・医学博士)推薦

◆KKベストセラーズ 宝泉薫の好評既刊◆
※上のカバー画像をクリックするとAmazonサイトにジャンプします
オススメ記事
-
「辞めジャニ」ツートップ、郷ひろみと田原俊彦に会ったときのこと。そして感じる、現代の闇深さ【宝泉薫】「令和の怪談」(9)
-
「ゲス不倫」で始まった、メディアと世間が「法を超えて」裁く「私刑」のブーム。ジャニーズはその最大の犠牲者だ【宝泉薫】「令和の怪談」(6)
-
田中みな実、広末涼子もそうだった。桐谷美玲だけじゃない「体重30キロ台」のスレンダー芸能人に世間が騒ぐ理由
-
アベガーに殺された安倍晋三と、ジャニーガーに潰されたジャニーズ。その本質は歪んだ世直しごっこである【宝泉薫】「令和の怪談」(7)
-
中居に国分、田原俊彦。ジャニーズ系への容赦ない狙い撃ちが示す「死人に口なし」どころか、生きた人間すら問答無用で葬る時代【宝泉薫】「令和の怪談」(5)


