長嶋茂雄を超えたキムタク、新時代の芸能人・櫻井翔。そして、SMAPと嵐が国民的になれた理由【宝泉薫】「令和の怪談」(10)
「令和の怪談」ジャニーズと中居正広たちに行われた私刑はもはや他人事ではない(10)【宝泉薫】
一方、嵐にも、ジャニーズの「横並び」志向は反映されている。国民的グループ化のきっかけを作ったのは、松本潤の『花より男子』シリーズだが、その直後に二宮和也がハリウッド映画で注目された。さらに、櫻井翔がキャスターを始め、相葉雅紀は志村けんの動物番組に登場。また、ジャニーズJr.時代から歌とダンスを買われてきた大野智は、総合的な芸能スキルを広く認められるようになった。
なかでも、嵐の安定感を語るうえで欠かせないのが櫻井の存在だ。東大卒で総務省の事務方トップにまで登りつめた父を持ち、自身も小学校(慶応義塾幼稚舎)からの慶應ボーイ。もはややくざ者の世界ではなくなりつつあった平成中期の芸能界において、一般社会でも通用、いや、成功しそうな人がメンバーにいることは、グループの信用みたいなものを大いに高めたといえる。
音楽的には、歌謡曲とJポップの距離がどんどん広がっていくなかで、両者を接続する役割を果たしたのがSMAPと嵐。どちらのジャンルのファンも楽しめるヒット曲の多さという点で、この二大グループは抜きん出ている。それゆえ『NHK紅白歌合戦』で重宝されたのだ。
もっとも、ジャニーズの音楽自体、和洋折衷的な伝統を持ち、日本人の「洋楽慣れ」にいろいろと貢献してきた。郷ひろみから田原俊彦、少年隊へとつながれたバトンは、SMAPのファンク路線、嵐のラップ路線が受け継ぎ、日本人の耳に、さらには体に、洋楽っぽさを馴染ませてきたのである。
そのバトンリレーは今も続いているものの、ここ10年くらいのいくつもの騒動で、事務所はズタズタになった。SMAPの解散と木村以外の4人の離脱は内輪もめがきっかけだから仕方ないとはいえ、事件化もしていない故人のセクハラ騒動で大混乱が起き、嵐でいえば二宮と松本が退所することに。嵐が会社を作ったことにより、再始動はそこを母体にしたかたちでやれるとはいえ、悔しさは残る。
この、わけのわからない騒動を改めて呪いたい気持ちだ。
が、呪うことがこのシリーズの目的ではない。騒動について検証し、ジャニーズの復権につなげていくために、前に進むとしよう。次回は、ジャニーズの伝統、いわばジャニーイズムという財産が今後どう受け継がれていくのか、ということについて考えてみる。
文:宝泉薫(作家、芸能評論家)
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