日本は「ラブ&ピース」の時代に突入する。君もヒッピーにならないか?【適菜収】
【連載】厭世的生き方のすすめ! 第16回
既存の社会体制や価値観が急崩壊した現在、私たち日本人はどこへ向かうのか。時代を鋭く抉ってきた作家・適菜収氏は「ラブ&ピース」だと指摘する。そのためにはヒッピーになることさえ躊躇してはならない。当サイト「BEST T!MES」の長期連載「だから何度も言ったのに」が大幅加筆修正され、単行本『日本崩壊 百の兆候』として書籍化された。連載「厭世的生き方のすすめ」では、狂気にまみれたこのご時世、ハッピーにネガティブな生活を送るためのヒントを紹介する。

◾️「ヤッピーからヒッピーへ」
昔、テリー伊藤がプロデュースしたテレビ番組に「ヒッピーからヤッピーへ」というコーナーがあった。ホームレスにシャワーを浴びさせ、髪を切り、スーツを着せ、ヤッピー(都会の知的エリート)にするという企画だった。そのホームレスは一時的に綺麗になるが、番組で晒しものになった後は、浮浪者に戻るのだからひどい話だ。
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しかし、今の時代、ヤッピーよりヒッピーのほうがより自由な生活を謳歌できるような気がする。「ヤッピーからヒッピーへ」という思考の転換が、閉塞感を打破するヒントになるのではないか。
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ヒッピーとは、1960年代後半にアメリカで始まった、若者のカウンターカルチャーである。スローガンは「ラブ&ピース」。私は子供の頃、誰もかれもが写真を撮るときにピースをするのを見て「バカではないか」と思っていたが、今ではその偏見を克服し、写真を撮るときにはピースをするようにしている。
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大学生の頃の一時期、私は髪をドレッドにしていた。ある晩、大学近くの講堂の前に座って音楽を聴いていると、女の子の二人組が「あの人、ヒッピーみたい」と聞えよがしに言った。そのときはむかついたが、今考えれば誉め言葉だった可能性がある。
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ヒッピーが頭につけている輪みたいなものを「ヒッピーバンド」というらしい。楽天市場で検索すると、関連商品も含めて339件もヒットしたので、ヒッピーを目指す人は少なくないと思う。トレンドは確実にヒッピーに向かっている。
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ヒッピーバンドが似合う男になるためには、長髪にすべきである。体型は肋骨が浮き出るくらいがいい。短髪やデブのヒッピーはあまり聞いたことがない。ジョン・レノンみたいな丸い眼鏡やパンタロンなどを購入し、まずは形から入ってみるのもいい。恥ずかしがってはいけない。
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ソウル・フラワー・ユニオンというバンドがある。ボーカルの中川敬はニューエスト・モデルにいた人。彼らはヒッピーなのか?
私のツイートを何度かリツイートしてくれたことがあるが、ヒッピーについての歌詞ならいつでも書くので、よろしくお願いします。
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RCサクセションの名盤『シングル・マン』に「ヒッピーに捧ぐ」という曲が入っている。ホリ・プロ時代のRCのサブマネージャーのあだ名が「ヒッピー」で、彼が急死したことが歌詞になった。しかし、これはわれわれフラワーチルドレンに与えられた曲のようにも感じる。切なく、やさしく、貧乏くさい。
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まわりまわって、日本も公民権運動が必要な時代になったのかもしれない。
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