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復習します‼️ なぜ正しい診断よりも正しい判断が大切なのか【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義⑪】

命を守る講義⑪「新型コロナウイルスの真実」

◼️我々はできることで勝負するべき

 もしかしたらインフルエンザウイルスはいないかもしれないけど、タミフルを出したほうがまあ得する可能性が高い患者だ、という判断はできるんです。鼻水を出してるだけの患者さんにタミフルを出しても得られるものはほとんどないし、タミフルにはお腹を壊す副作用があるので、そっちのリスクのほうが高い。

 そうすると、「この症状がインフルエンザというウイルスの感染症であるかどうか」を議論するより、「この人はタミフルを出すべき患者なのかどうか」を判断するほうが、より合理的です。サンプリングで喉をぐりぐりすると患者さんも痛いし、そうこうしているうちに医者もウイルスを撒き散らされる、それが実際にインフルエンザだったり、よりによって新型コロナだったりしたときの副次的なダメージが大きいんだから、正しく診断することは諦めて正しく判断する。だから、これまでもインフルエンザこそが典型的な正しく判断すべき病気だったし、新型コロナウイルスがきっかけになって、ようやく日本医師会もそれを言い出しました。

 話を新型コロナウイルスに戻します。

 ですからぼくは、日本政府のコロナ対策は概ね正しいと考えています(「概ね」と表現したのは、部分的には間違いがあると思うからです。それについては後ほどあらためて解説します)。4日間症状が続いたら病院に行きましょう、あるいは妊婦さんや高齢者、持病のある人は少し早めに病院に行きましょうというのは、正しく診断することをはじめから放棄するということです。

 このやり方では、家で寝ていれば勝手に治るコロナウイルスを見逃しているかもしれないけど、別に見逃してもいいんです。家で安静にしているのなら。病院に来なくていい人は病院に来ないほうが、二次感染は拡がりません。症状が軽い人に対して病院ができる治療はそもそもないんだから、勝手に治る人は勝手に治しちゃえばいい。それでも治らない人は病院に来れば、そこでは酸素も投与できるし、血圧を上げることもできるし、人工呼吸器につなぐこともできる。その必要性を判断する根拠は、症状です。PCRが陽性だったらコロナだと言い当てられるけれど、場合によってはPCRが陰性かもしれない。陰性であっても、もしかしたらコロナかもしれない、という判断はできるから、隔離は続けますよ、ということになります。

 繰り返しますが、正しく診断するという方法論に無理がある以上、正しく判断する戦略を取るしかありません。できっこないことにすがるより、我々はできることで勝負するべきなんです。
「新型コロナウイルスの真実⑫ 」へつづく)


 【注】本書『新型コロナウイルスの真実』は現在、発売即4刷となりましたが、書店の休業などで「お手元に届かない」との多くの皆さまからお問い合わせが入っております。最新刊でありますが、本書の第1章と第2章を「全文再編」連載という形で、皆様にお届けいたします。著者・岩田健太郎先生のご厚意により、最適な感染症対策への一助となるように専門家として何度もお読みいただけるようにとご配慮いただきました。皆様やご家族、多くの方々の安全を祈念申し上げます。なお全国の書店で配本されていますが、くれぐれも「外出」の際は感染経路と感染の知識を踏まえ、ご行動されることを衷心よりお願い申し上げます。


 

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 発売即重版3刷
『新型コロナウイルスの真実』
岩田健太郎医師・著

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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