【なぜ米国の最先端技術で造られたスタジアムは24年で壊れ、日本の神社仏閣は数百年建ち続けるのか?】 | BEST T!MESコラム

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なぜ米国の最先端技術で造られたスタジアムは24年で壊れ、日本の神社仏閣は数百年建ち続けるのか?

「ハイテク」な歴史建築②

常に発展し続ける、現代建築の技術。しかしどんなに技術力が上がっても、日本古来の伝統的な歴史建築には、耐久性の面で及ばないといいます。一体なぜなのでしょうか。『「ハイテク」な歴史建築』(KKベストセラーズ刊)の著者・志村史夫氏に話を聞きました。

 

鉄筋コンクリート建築と木造建築、強いのはどっち?

 現代の建築物、建造物の主要な材料といえばコンクリートです。

 コンクリートは骨材(一般的には砂、砂利)、水、セメントを調合し、こね混ぜて固まらせた一種の人造石を指します。コンクリートは圧縮力には強いのですが引張力には弱いため、建造物にはコンクリート単体で使うより引張力に抵抗してくれる鉄筋を入れた、鉄筋コンクリートとして使われることが多いのです。事実、現代の木造建築物以外の建造物のほとんどは例外なく鉄筋コンクリート造りです。

 じつは、鉄筋コンクリートの構造と木の細胞壁の構造とはそっくりなのですが、両者の耐久性については甚大な違いがあります。これは、木の細胞の3成分がいずれも炭素と水素と酸素から成る同種の物質で構成されているのに対し、鉄筋コンクリートが鉄、セメント(石灰石)、砂利、水という異種の物質で構成されていることのためです。特に、耐久性の点で鉄と石灰石と水の組み合わせがよくないのです。

 樹齢が数百年から数千年のさまざまな木が元気に立ち続けていることからも明らかなように、細胞壁の“構造材”としての耐久性も数百年から数千年に及ぶのですが、一方の鉄筋コンクリートの耐久性はどうでしょうか。

 日本では、1959年建造の長崎鼻灯台が“長寿”として話題になるくらいですから、通常はせいぜい50年、どう頑張っても100年が限界ではないでしょうか。

2000年、爆破解体時のキングドームスタジアム

 鉄筋コンクリート建造物の耐用年数に関し、私の記憶に最も鮮烈に残っているのは、アメリカ・ワシントン州シアトルにあり、アメリカ大リーグのシアトル・マリナーズが本拠地にしていたキングドームスタジアムです。このスタジアムが最先端の鉄筋コンクリート、ドーム構造の多目的スタジアムとしてオープンしたのは、1976年3月でした。私も、在米中、この球場でマリナーズの試合を見たことがあります。

 このキングドームスタジアムが老朽化の為に取り壊されたのは、オープンからちょうど24年後の2000年3月のことでした。巨大なドーム球場は、周囲に仕掛けられたダイナマイトの爆破によって一瞬で灰燼となりました。つまり、最先端技術を駆使して建造された鉄筋コンクリートの建物が、わずか24年間で老朽化し、その使用に耐えられなくなったのです。

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志村 史夫

しむら ふみお

1948年東京生まれ。名古屋大学工学博士(応用物理)、静岡理工科大学教授、ノースカロライナ州立大学併任教授、応用物理学会フェロー、日本文藝家協会会員。日本とアメリカで長らく半導体結晶などの研究に従事したが、現在は古代文明、自然哲学、基礎物理学、生物機能などに興味を拡げている。

主な著書に『「ハイテク」な歴史建築』(KKベストセラーズ)、『古代日本の超技術』『古代世界の超技術』『いやでも物理が面白くなる』(講談社ブルーバックス)、『スマホ中毒症』(講談社+α新書)、『アインシュタイン丸かじり』(新潮新書)、『漱石と寅彦』(牧野出版)などがある。

 


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  • 志村 史夫
  • 2016.09.09