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人類がまもなく絶滅することは間違いない

地球上の生物の歴史から見える、人類の未来

人類が招いた、大量絶滅の時代

AIや人工知能、そしてロボットの進化によって5年後、30年後、そして300年後に何が起こるのでしょうか? 9/8(木)に『意志を持ちはじめるロボット ―人類が創りだす衝撃的な未来―』(ベスト新書)を刊行するJAXA名誉教授・中谷一郎先生が明かす、人類滅亡のシナリオとは?

 

写真提供/Pixabay

人類がまもなく(と言っても数百年から数千年以内に)滅びるという見方は多くの研究者の共通認識になっているようです。たとえば、今から2億年先までの生物の進化を予測した『フューチャー・イズ・ワイルド』という本は典型的な例です。
 これは、もとはイギリスで放送されたテレビ番組を本にしたもので、多くの科学者が協力して、地球上の今後2億年にわたる生物の消長を予言しています。
 この本には、将来2億年の間に出現が予想されるさまざまな奇想天外な生物が登場しますが、人類はなんと、あっさり数千年でその歴史の幕を閉じるとして2億年の未来予測には、(最初の一瞬、つまり、この本の予測範囲2億年の初めの10万分の1程度の時間を除いて)登場しません。人工的な環境破壊と次の氷河期の影響で人類は滅亡すると予測しているのです。
 学者、というより人類はこのような時間スケールの長い、しかし重大な問題に関して、よく言えばずいぶん冷静、厳しく言えばひどく無頓着ですね。たとえば、超大型の台風が接近中で、明日にでも、あなたの家が飛ばされるかもしれないというような予測には人間はパニックに近いような対応をします。
 しかし、数百年から数千年以内に、全人類が滅亡するなんていう予測には、ほとんど動じませんね。

 人類は本当に絶滅危惧種なのかという問題を、地球上の生物の歴史の視点から見直してみることにします。
 宇宙の誕生は138億年も昔のビッグバンに遡ります。さらに地球が誕生したのは46億年前、つまり地球の年齢は、宇宙の年齢のちょうど3分の1です。そして地球に原始生命が出現したのは、今から38億年前ですから、地球上の生命の歴史は宇宙の歴史の4分の1近くを占めています。
 それにしても、「億年」なんていう単位を想像することは容易ではないので、たとえば、宇宙の年齢を46歳に縮めてみましょう。すると、地球の年齢は
15歳ほどに相当します。つまり現在壮年期の宇宙を仮定すると地球は青年です。そして地球上の生物は、今13歳、つまり少年ということになります。生命の歴史は意外に長いですね。
 さて、地球上の生物はその長い歴史の中で5、6回の大量絶滅を経験していることが知られています。
 でも、そのたびにどうにか命をつないで、現代に至っているわけです。今も、人類を含む、多くの生物が大量絶滅のさ中にあります。そして現在進行中の絶滅が過去の絶滅と決定的に違うのは、自然現象ではなく、人為的な環境破壊によるものであることです。しかも絶滅に向かう速度が過去と比して100倍から1000倍になっているというのです。
 ただし、ここで「人為的な」環境破壊と言い切るのは正確な表現かどうか疑問があります。というのは人類だって自然選択により生まれた自然の生物であり、たとえば、ある島の動物が植物を食べつくして絶滅してしまうのが自然の営みであるとするなら、人類が地球という(宇宙からみれば)砂粒のような島の環境を破壊しつくして滅んでいくのも宇宙人から見れば自然現象とも言えるからです。何が自然現象で、何が人為的な行為かは視点によって異なるわけですね。

 それはともかく、人類は文明の進歩という収穫を得るのと引き換えに急速に地球環境を変え、そして資源を猛烈な勢いで消費してきました。いったい人類は今進行中の大量絶滅を乗り越えることができるのでしょうか。
 エネルギー源、あるいは金属など鉱物の埋蔵量は、楽観的な試算から、かなり悲観的な試算まで幅がありますが、枯渇の時期は、いずれも数十年から数百年の先であるとの予測です。
 たとえば、石油、天然ガス、石炭などの一次エネルギーは、枯渇の予想時期が、毎年のように延びて何となく楽観ムードをかもしていますが、それもせいぜい、50年とか100年の時間スケールの話です。鉄、アルミニウム、銅などの金属の枯渇予想時期も似たようなもので、50年~数百年程度です。
 つまり、どんな楽観的な予測でも、数千年も資源が潤沢にあるという結論には至りません。地球の46億年の歴史の時間スケールで、数万年とか数百万年などという未来を考えれば間違いなく悲観的にならざるを得ないでしょうね。

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中谷 一郎

なかたに いちろう

1944年生まれ。JAXA名誉教授、愛知工科大学名誉教授。1972年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。電電公社電気通信研究所に勤務し、通信衛星の制御の研究に従事。1981年より宇宙科学研究所(現JAXA)に勤務し、助教授・教授を務める。科学衛星およびロケットの制御、宇宙ロボットの研究・開発に従事。東京大学大学院工学系研究科助教授・教授、愛知工科大学教授、東京大学宇宙線研究所客員教授・重力波検出プロジェクトマネージャーを歴任した。


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