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田原総一朗 「今の日本の姿を見れば、ほぼ田中さんの構想に近づいているのが分かる」

田原総一朗さん30日毎日連載 Q11.最近、田中角栄氏が再評価されています。その要因は?

『変貌する自民党の正体』(ベスト新書)を上梓。常に第一線のジャーナリストとして活躍したきた田原総一朗氏に話を聞いた。

Q11.最近、田中角栄氏が再評価されています。その要因は?

 
 

 僕は昔から非常に高い評価をしているよ。その要因は3つある。まず田中角栄という人は、非常に先見性を持った人だった。
 1967年に都知事選で、社会党と共産党が推薦した美濃部亮吉さんが当選した。この時、自民とは独自候補を出さないで、民社党が推薦する元立教大学総長の松下正寿に相乗りしたわけだ。でも敗れた。そして美濃部さんが戦後初の革新の都知事となった。
 京都府では50年から社共両党の推す蜷川虎三が連続当選。返還前の沖縄は革新が推す屋良朝苗が琉球政府主席に。71年には大阪府も社共が推薦する黒田了一が知事に。それに神奈川や名古屋もみんな革新系だった。全人口の約40%が革新系の首長の自治体で暮らす状態だった。
 それに田中角栄は危機感を持ったんです。そこで「中央公論」67年6月号に「自民党の反省」という論文を発表する。その中には、大都市圏に人口が集中したことによる弊害、つまり交通渋滞や各種の公害が述べられ、ここのまま事態が推移すれば国民経済事態が根底から揺らぐ結果になるやもしれぬということが書かれていた。
 この問題に自民党がうまく対処できなければ国民の不満が爆発して、各自治体で革新系の首長がどんどん生まれ、ついには、国会もそうなるのではないかという危機感を抱いたんです。
  それを基に「都市政策大綱」というものを作った。
 骨子は「均衡ある国土の発展」。日本中を一つの大きな都市にしようという発想だった。公害は産業や人口が多い太平洋側に集中していた。それに対して、山間部や日本海側は人口が減って寂れ、自民党の大票田だった農業人口がやせ細ってしまう。
 そこで「1日生活圏、1日経済圏、1日交通圏」という言葉を作り出した。この時はまだ沖縄がまだ日本に返還されていないので、北海道から九州まで、1日で行き帰りできる交通網を整備しようというわけだ。つまり北海道から九州まで新幹線と高速道路を通し、あらゆる地域に地方空港を作る。そして四つの日本の島、北海道と本州、四国と九州に橋をかけ、トンネルを作ってつなぐという構想だ。これが後に彼のベストセラー、『日本列島改造論』という本の基礎となった。
 まだ、完全ではないけれど、今の日本の姿を見れば、ほぼ田中さんの構想に近づいているのが分かる。それを60年代の終わりに言って、実現している。その先見性と構想力が改めて見直されているんだ。

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明日の第十二回の質問は「田中角栄氏を評価すべき、二つ目の要因は何でしょうか?」です。
 

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田原 総一朗

たはら そういちろう

ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。60年早稲田大学文学部卒業。同年岩波映画製作所入所。64年東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』講談社)、『安倍政権への遺言 首相、これだけはいいたい 』(朝日新聞出版)など多数の著書がある。


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