「徹底自粛、徹底補償」を批判していた京大大学院藤井聡教授の変節と裏切り【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「徹底自粛、徹底補償」を批判していた京大大学院藤井聡教授の変節と裏切り【篁五郎】

言っていることは矛盾だらけ 京大教授藤井聡が信用できない4つの理由

 

◾️反自粛から反医療へデタラメを拡大

 

 こうしたデタラメ発言を繰り返してきた藤井教授だが、反自粛をこじらせたのか、医療に対して宣戦布告をするような言動が目立ってきた。「昔は赤ひげ先生みたいに風邪をひいても、お腹が痛くても、骨が折れても、まずその医者に診てもらっていた。専門医は自分の専門とする部分の治療にだけ全力を注ぎ、それ以外のリスクについては門外漢。専門に分けたからいかんのです」とも主張。

 的外れもいいところだろう。開業医でも自分の専門外の診療をしている医師もいる。開業医同士で連携をしている地域もある。大きな病院では、専門医同士がカンファレンスで連携しながら患者の病態を診ている。藤井教授はどこの世界の医療の話をしているのだろうか。要するに、根拠なく威勢のよい発言をして、ドヤ顔しているにすぎない。

  また、藤井教授は公的病院が少なく民間病院が多い現状が、過剰医療を生み出す構造になっていると主張。同時に民間病院は「金もうけ主義」だと一方的に批判。医師は患者を騙し放題の状況に置くことができるとも断言。医師の公務員化を提言している。医療従事者を十把一絡げに侮辱していた。

 また、公務員化の理由として6割の病院が赤字であること、分野ごとの医師の数や割合を調整するというメカニズムが崩壊したことを挙げている。さらに過剰医療対策として「無駄に感じられる部分の延命治療はやめよう」という判断に至った。そして、健康寿命を最大化するために「寝たきり老人をなくそう」という目標を立てたスウェーデンを真似るようにと述べている。姥捨山の発想が藤井教授にあるのは明白だ。

 藤井教授の過剰医療批判は的はずれである。今の日本は「患者を早く退院させてベッドのサイクルを早くする」という方向に進んでいる。「90日ルール」が象徴といえるだろう。「90日ルール」とは、入院生活を送っていた患者が「治療済み」を理由として90日以内に退院を促されるもの。症状が改善していなくても半ば強制的に退院させられる事例も数多くある。

 

◾️成田悠輔氏への批判が自身のブーメランに

 

 先日、経済学者・成田悠輔氏がキリンビールの缶チューハイ「氷結」のウェブ広告に起用されて、キリン不買運動が起きる騒ぎになった。理由は、成田氏が過去に少子高齢化に対して「解決策は高齢者の集団自決しかない」と発言したことが問題視されたためだ。

 抗議を受けてキリンは成田氏の広告を直ちに削除。その理由について「さまざまなご意見を頂戴したため、総合的に判断」と成田氏の過去の発言を考慮したことを認めた。成田氏は財務省広報誌にも登場していたため、騒動は国会でも取り上げられた。

 そんな中、成田氏を舌鋒鋭く批判したのが藤井教授だ。藤井教授はXで成田氏の発言を取り上げ、下記の投稿をしている。

 

高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいいという趣旨の成田悠輔氏の「老人集団自決論」がダメなのは

 「老人はシケイなのだ」

というバカボンのパパみたいな事を言ってるに等しいから。

それは赤塚不二夫ギャグ級に「論外」である。》

 

 このように強い言葉で攻撃。成田氏を擁護するリプライが来ると「『常識』の重要性を今こそ思い起こすべきです」と反論し、無料メルマガで成田氏の発言を糾弾した。

 残念ながら藤井教授に成田氏の批判をする資格はない。なぜなら彼もコロナ禍に置いて、高齢者を蔑ろにするような発言をしていたからだ。

 藤井教授は、コロナ禍初期に対策として「高齢者等の社会活動からの『隔離』をはじめとした、高齢者対策を徹底せよ」と提言していた。理由して、死者の大半が高齢者であると自身がトップを務めるユニットで示したデータを開陳しながら、「高齢者や基礎疾患をお持ちの方々さえコロナ感染を徹底的に回避する取り組み『さえ』行っておけば、基礎疾患の無い健康な若年層については、過剰な自粛は必ずしも必要ではない」と断言。高齢者と同居している家庭は部屋で隔離をすればいいと述べていた。

 藤井教授は成田氏を糾弾したメルマガでこう述べている

「お前の愛する祖父母、あるいはお前の愛する人が祖父母を愛していたとしても、自決しろとその言葉を投げかけて、心の痛みや違和感を微塵も感じないのか?」

 これまでの藤井教授の高齢者に対する発言はなんだったのか?

 藤井教授の「高齢者は徹底隔離」というコロナ対策は、成田氏の「高齢者は集団自決するしかない」と本質的には同じである。それは、ある問題を解決するために一部の人が犠牲になればいいという優生思想的な発想だ。この思想は旧ナチス・ドイツが戦時下で障害のある人に対し「断種法」に基づく強制的な不妊手術や、「T4作戦」と呼ばれる計画的な大量殺りくが行われていた危険な考えである。

 つまり藤井教授と成田氏の根底に流れているのは同じ思想である。同じ穴のムジナだ。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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