【結婚から会議、武道まで!? 幅広く使える哲学の思考法とは】 | BEST T!MESコラム

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結婚から会議、武道まで!? 幅広く使える哲学の思考法とは

齋藤孝先生の『使う哲学』より、実生活で使える哲学実践術。

ヘーゲルの「弁証法」で結婚を考える

 

G・W・フリードリヒ・ヘーゲル(1770~1831)

近代ドイツの哲学者の一人にG・W・フリードリヒ・ヘーゲル(1770年~1831年)がいます。ヘーゲルといえば、「弁証法」を思い起こす人も多いと思います。

 弁証法って何? と聞かれれば、「正、反、合でしょ」と答える人もいるでしょう。

「正と反という二つの対立する問題があっても、弁証法ではどちらも切り捨てたりしないよね。それで次の次元に進んで、より良い方法を見つけるんだ。このことを止揚とかアウフヘーベンとかいうんだよね」

 弁証法について、ここまで答えられる人もいるかもしれません。知識としては、これはあるほうかもしれませんが、身近な問題に引きつけて考えることができればさらによいと思います。

 たとえば結婚。あなたが男性だとして、ある女性と結婚することになったとします。

 一人暮らしが長く、気ままに暮らしてきた。しかし、つき合って5年になる女性がいて、結婚することになった。そうした状況だとします。

 イザ結婚してみると、これまでとはどうも勝手が違う。日曜日は昼近くまで寝ていたのに、そうすることもできなくなった。日曜日は朝から一緒に出かけたい、買い物につき合ってほしい、風呂の掃除をしてほしい、貯蓄は毎月○万円以上したい……といろいろなことを要求され、独身時代とはずいぶん違う生活になってしまった。

 この例では、独身時代が「正」だとすると、結婚生活は「反」になります。「反」に進むことを拒み、「正」のままでいると、成長は止まってしまうかもしれない。しかし、結婚を受け入れ、結婚生活を営むことで成長できて、「合」に達することができるかもしれない。弁証法で考えると、結婚をこのようにとらえることもできます。

 さらに、子供が生まれたとします。最初は赤ん坊だから、大人からすると、まるでわけのわからない存在です。言葉は通じないし、言うことは聞かないし、泣いたり笑ったりを繰り返す。大人の常識の通用しない存在、それが赤ん坊です。でも、この存在がまた夫婦を、人を成長させてくれる可能性があります。夫婦という「正」に対し、子供という「反」が、二人を次なる「合」へと導いてくれることがあるのです。

 これは弁証法で考える夫婦や家族の姿といえます。こうして夫と妻は人として発展し、人としての幅や奥行きを広げていけると考えることができるのです。

 ヘーゲルの弁証法を意識するだけでも、これまでなかった幅と奥行きが人生に生まれます。

 たとえば、会社の会議で提案した企画に反対意見を出されたときには、「これは『反』だな」と思って、その反対意見を取り入れ、飲み込んで、さらに上質の企画に高めていくのです。

 あるいは、最初から必ず反対意見を出してもらうという方法もあります。「合」をめざし、止揚していくことを当初からめざすのです。これらは弁証法を活かす生き方といえます。

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齋藤 孝

さいとう たかし

明治大学文学部教授。



1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士を経て、現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。



250万部を超えるヒットとなった『声に出して読みたい日本語』シリーズ(草思社)のほか、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『大人の精神力』、『10歳までに身につけたい「座る力」』(いずれも小社刊)など著書多数。


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