鬼に金棒、意見に理由【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第7回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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鬼に金棒、意見に理由【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第7回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第7回

 

【犬のシャンプーをした】

 

 朝から100立米ほどの落葉をドラム缶6基で焼却した。そのあと、僕が担当の犬をシャンプーした。再び庭に出て、落葉をまた100立米ほど袋に集めた。このあと、重さ10kgのブロワ(エンジンで空気を噴出し、落葉を吹き飛ばす道具)を背負って、掃き掃除の予定。秋は忙しい。ほとんどが肉体労働。若いときから、コンクリートを練る以外では、肉体労働というものに縁がなかったから、最近になって「良い汗」の意味が少しわかった。

 本連載のまえに書いていた『静かに生きて考える』がもうすぐ本になる予定だが、その再校ゲラが届いた。まずは、初校ゲラと突き合わせて、指示した修正がされているかをチェック。これに3時間近くかかった。こういう文字を読む仕事が苦手である。どうして作家になったのか、と不思議でならない。

 好きで得意なものが、実は仕事として向いていない。逆に、嫌いで苦手なものが、仕事として向いている。そういうことが世の中は、ままあるようだ。

 

朝食のとき、人間と同じようにテーブルに着く犬。僕はなにもやらないので、一瞬たりともこちらを見ない。じっと見つめているのは奥様(あえて敬称)の方。

 

文:森博嗣

 

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✴︎森博嗣 新刊『静かに生きて考える』2024年1月17日発売✴︎

 

 

森博嗣先生のBEST T!MES連載「静かに生きて考える」が書籍化され、2024年1月17日に発売決定。第1回〜第35回までの原稿(2022.4〜2023.9配信、現在非公開)に、新たに第36回〜第40回の非公開原稿が加わります。どうぞご期待ください!

 

 

世の中はますます騒々しく、人々はいっそう浮き足立ってきた・・・そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?

森博嗣先生が自身の日常を観察し、思索しつづけた極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を見極める智恵を指南。他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむヒントに溢れた書です。

〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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