プロレスラー関根“シュレック”秀樹 “魂の叫び” 「最後のパワーを振り絞って君は立ち向かったか?」【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

プロレスラー関根“シュレック”秀樹 “魂の叫び” 「最後のパワーを振り絞って君は立ち向かったか?」【篁五郎】

あなたが出会うことがなかった人生がここにある。

関根シュレック秀樹選手のXより引用

 

■ プロレスと総合格闘技は似て非なるもの!?

 

 しかし、夢の舞台である「RIZIN」の初戦では完敗を喫してしまった。このとき関根は総合格闘技を引退してプロレスに専念すると周囲から思われていた。

「どちらかに専念しようって考えはプロに転向したときからありませんね。プロレスは諦めた夢だった。PRIDEは憧れていた舞台。格闘技ブームの頃、自分でチケット買ってPRIDEを観に行ったときに活躍していたのは桜庭(和志)さん、高山(善廣)さんとかUWFの選手だったんです。俺もあのとき諦めなきゃっていうのは常にあって。そういう場ですよね。だからどっちを選ぶってのはできませんね」

 プロレスラーと総合格闘家、似て非なるものの活動を同時に続ける関根に現在のプロレスと総合格闘技についてどんな思いを抱いているのだろう。

「技術的な部分を見ると、プロレスは受けるのが華になっているところがあるし、プロレスと格闘技の競技性が明らかに違うところがあります。今プロレスはカテゴライズされていて、昔のDRAGON GATE(日本の競技性、アメリカのエンターテイメント性、メキシコの技術感をミックスしたスピード感あふれるレスリングが特徴のプロレス団体)のようにすごいテクニックになっています。そういった部分に格闘技性を持ってこられるプロレスラーは数人くらいでしょう」

 関根はプロレスと格闘技は別の競技だと思っていない。総合格闘技にもプロレスのような華が必要だし、反対にプロレスにも総合のような説得力のある強さがないと、リング上でのテクニックで観客を納得させる力が生まれないと考えている。

 かつて「プロレスこそ最強」という看板を掲げたアントニオ猪木は、モハメド・アリを筆頭に数多くの格闘家と対戦することで証明しようしてきた。1980年代後半に一大ブームを巻き起こした団体UWFは、従来のプロレスでは当たり前だったロープワークなどを排除し、競技性を高めることでプロレスの強さを示そうとした。

 猪木の異種格闘技戦やUWFは今の総合格闘技の原型と言われている。彼らが残したものは今のプロレス界にあるのだろうか?

「説得力を出すという意味で必要なのがそういったプロレスも格闘技もできる人材だと思うし、それが猪木さんだったり、佐山聡(初代タイガーマスク)さんが言っていたストロングスタイルだと思います。佐山さんはストロングスタイルプロレスという団体をやっていていつもこう言っています。

『UWFも何もかも全て入れたのがストロングスタイルでありプロレス』

 そこに戦いがあるということですよ。この歴史の流れがすごい面白い。今、自分がその中に入れてもらえているのはすごい嬉しいですね。この状況を考えると、どっちかってできないんですよ。両方できてこそプロレスだと思います」

「プロレスラーは本当は強いんです」と言った桜庭和志は総合格闘技戦で連戦連勝して、自らの言葉を証明してきたのは今から20年ほど前のこと。その勇姿を見ていた関根は再びプロレスラーの強さを証明し、格闘技のエッセンスをプロレスに伝えようとしている。その活動を彼は「天啓」と言った。

「今のマット界でそれができる人間ってどれくらいいますか? ものすごく少ないと思います。だからこそ嬉しいんです。オファーがくればプロレスも総合格闘技も出ます。この感覚は変わりませんね」

 プロレスラーはかつて非常識の代名詞的な存在であった。人ができないことを平気でやってのける存在として生き続けたいというのが彼の望みなのかもしれない。

KEYWORDS:

オススメ記事

篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

この著者の記事一覧