“薄利多売”はバカの商法 大阪の商売は何が間違っているのか?【藤田田の言葉】
私自身のユダヤ商法
日本マクドナルドの創業者である藤田田氏が1972年に刊行した『ユダヤの商法:世界経済を動かす』は、世界経済の中心にいながら、当時の日本人の大半がほとんど意識することのなかったユダヤ人という存在に脚光を当て、累計82万7000部を記録するベストセラーとなった1冊である。本書には、自らを「銀座のユダヤ人」と称した著者が、ユダヤ人たちとのビジネスを通じて得た見識が余すことなく記されている。そのなかから、大阪出身の著者が、ユダヤ人と大阪人の商売のちがいについて言及した部分をご紹介しよう。

◾️ユダヤ商法と大阪商法
日本の代表的な商法は、私の生まれた大阪に伝わる大阪商法である。そのガメツさを看板にする大阪商法ですら、ユダヤ商法の前ではおよそ『商売』とは言えない幼稚なものでしかない。
大阪商法は、いわば薄利多売の商法である。〝薄利多売〟でガメツく儲けていくのが大阪商人なのだ。
ところが、ユダヤ人には〝薄利多売〟ということが分からない。
「たくさん売って、薄利とはどういうことなんだ、デン。たくさん売るなら、たくさん儲けるべきだ」
ユダヤ人は決まってこういう。
「たくさん売って〝薄利〟だなんて、フジタの言う大阪商人っていうのはバカじゃないか。うん、きっとバカなんだぜ」
私はユダヤと大阪の歴史を両手ではかってみた。大阪は仁徳天皇以来二〇〇〇年、ユダヤは五〇〇〇年だ。
残念ながら、倍以上もユダヤの歴史の方が長い。ユダヤが三〇〇〇年以上も歴史の時間を刻んだ時、日本はまだ文字すら存在しなかったのである。

◾️安売り競争は「死のレース」
同業者同士で薄利多売競争をして、両方がポシャッてしまうということはよくある。よその店より少しでも安くして、少しでも多く売ろうという気持ちは分かるが、少しでも安く売ろうと考える前に、なぜ、少しでも厚利を得ようと考えないのだろうか。メーカーや商社は、利益が薄ければ、いつ倒れるか分からない危険にさらされているのも同然で、まして、薄利競争などは、お互いの首に縄をかけて、ヨーイ、ドン、で引っ張り合うようなもので、愚劣きわまりない商法である。
ひょっとすると、この薄利競争という名の『死のレース』は、徳川時代に商人を弾圧して、権力をふるって安売りさせた時の、名残りの商法ではないだろうか。
(『ユダヤの商法:世界経済を動かす』から抜粋)
文:藤田田