広末涼子W不倫報道で考える “芸能人叩き” を正当化するマスコミの虐め体質【松野大介】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

広末涼子W不倫報道で考える “芸能人叩き” を正当化するマスコミの虐め体質【松野大介】


広末涼子とシェフとのW不倫は、夫のキャンドル・ジュン氏が会見し、ワイドショーや芸能マスコミの報道は未だおさまらず、ネットニュースや書き込みも盛んだ。広末涼子が謝罪からCM降板する事態となった今回の件について、元芸人で作家の松野大介氏は「メディアがネットやコンプライアンスを利用して芸能人叩きを正当化している」と独自の解説を語る。


広末涼子

 

 

 私は芸能ニュースに興味はないが、今回は指摘したいことがある。

 不景気の芸能マスコミは、未だに世間が芸能人のスキャンダルに興味があるかのように報道し、ネットやコンプライアンスを使って芸能人叩きの商売を続けている。

 わかりやすく書きます。

 

(1)不倫は犯罪ではない

 

 これはまず前提として必要なこと。説明するまでもなく、不倫(既婚者の浮気)は昔から世の中に溢れ、珍しいことではない。

 法律的にも犯罪ではない。

 だから今回の広末さんのしたことは、違法薬物所持や窃盗や暴力事件などとは明らかに違う。(もちろん訴えられたら法的に罪になる可能性はある)

 しかしマスコミの扱いは芸能人スキャンダルという枠組みで法をおかした芸能人と同列の報じ方だ。

「子供がかわそう」というのはあくまで他人の家庭のプライベートの話で、子供がかわいそうならメディアで取り上げない方が子供のためだろう。

 

(2)芸能人に一般人への影響力はさほどない

 

 今の時代、芸能スキャンダルを気にする人はごくごく一部だ。ほとんどの国民は芸能人のプライベートに興味を持てなくなっているし、値上げや不景気の最中、日々の生活に追われている人が多い。

 ましてや現在、人気俳優でもない広末涼子が不倫したことを、友達との会話で話題にしたり腹を立てたり羨ましがったりする人はごくほんの一部だろう。

 しかし芸能マスコミやワイドショーはいまだに「社会への影響」とか「世間が納得する形で」とか、さも国民にとって大事のように話す。ここにメディア側と国民の乖離が顕著にある。「世間」を出すことで芸能人の不倫報道を正当化するわけだ。そうしないとやる意義が見つからないほどどうでもいいことを報じているとわかってるから。

 広末さんは謝罪し、CM数社から降板したが、これも同じように、今時CMに出てる芸能人によって買う商品を決める人がどのくらいいるだろうか? 

「広末涼子を信じて○○を買ってたのに! もう買わない!」って人、身近にいます?

 だいたいは安さと性能のバランスで何を買うか決めるだろう。「(石原)裕次郎がCMしてるから松竹梅を飲むか」なんて昭和のような影響力が今のタレントと宣伝媒体にあるわけないよ。人気アイドルが宣伝する商品をファンが応援のために買うとか、アニメキャラの絵柄の商品を子供が買うくらいではないか?

 ここにもメディア側と消費者側の乖離がある。スポンサー側も、もちろん犯罪に触れる事案で即降板なのはまっとうな判断だが、法に触れないプライベートなことで即降板させる傾向は正しいのか、私は疑問だ。

次のページ芸能人が広末涼子に触れないワケ

オススメ記事

松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

この著者の記事一覧