「LGBT理解増進法案」がヤバい!? 「同性結婚」のいったい何が問題なのか【谷龍哉】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「LGBT理解増進法案」がヤバい!? 「同性結婚」のいったい何が問題なのか【谷龍哉】

「強制結婚」から「自由結婚」のさらなる沼へ:結婚制度の変遷と今後の課題

 

【お見合い結婚から恋愛結婚へ】

 この結婚の制度の変化は世の中にどう影響したのか?

「国勢調査が始まった1920(大正9)年からのデータを振り返ってみても一貫して生涯未婚率は1990年まで5%以下で推移しています。」(注2から引用)※50歳になるまで一度も結婚しない人の割合を「生涯未婚率」という

 

 「生涯未婚率の推移」(注10)、「恋愛結婚と見合い結婚比率の推移」(注11)のグラフを見ると、1965年にお見合い結婚と恋愛結婚の比率が逆転しており、記事内で1965年に25歳だった結婚適齢期の男性が50歳になった年が1990年であることに触れています。

 これらのデータ通りであれば、日本人のほとんどは1965年ごろまで皆さん結婚しまくっていたことになります。みんな誰かと結婚出来る世の中は今では考えにくく、いったいどういうことなんだ?と疑問に思う若い方が多いかもしれません。

 明治時代に家制度を庶民の暮らしに取り入れたことにより、お見合いが活発になり国民総結婚時代へ突入。そのまま人口が爆発的に増えたものの、近代化が進むにつれ、国民の価値観が変容し、お見合い結婚と恋愛結婚の比率が逆転し、お見合い結婚する人が激減するとともに結婚する人が減ってしまったと読み取れます。

 また「草食男子」なる言葉がここ数年聞かれますが、「「恋人のいる率」は80年代の水準に戻っただけ」(注2)のグラフを見ると、1982年から男性に恋人がいる割合はあまり変化がありありません。

 グラフでは男性が2025%で推移する一方、女性は1987年以降3035%で推移しています。草食男子というよりも、一部の男性に複数人の彼女がいるように見えるんですよね。

 肉食男子が昔から現在まで幅をきかせて女性を独占しているとしたら、けしからん話ですよ。

 

 また、生涯未婚率とは逆の、配偶者有(結婚している男女)データを見ると以下のようになっています。

 統計情報は1920年からの国勢調査(3)でしかわかりませんが、国勢調査のデータによると1920年の配偶者有は男性 約63%、女性約63%、2020年の配偶者有は男性約57%、女性約54%となっています。※結婚した人数ではなく、結婚している累計人数

 国民の配偶者有割合は減少傾向にあり、このままいけば2人に1人は結婚していない独身大国ニッポンへなりそうですね。自分自身のためにやたら金を使う独身貴族が多いように感じていましたが、本当に多かったみたいです。

 生涯未婚率の記事(注10)では4人に1人と表現されていましたが、あくまで「50歳までに結婚したことがない人」の統計です。結婚後に離婚等で独身になることを含めた、配偶者有割合の方が重要な統計情報だと感じます。

 我々日本人は恋愛結婚を手にして140年間、お見合い結婚が廃れていくのを横目に結婚についてきちんと向き合わず、恋愛の延長で結婚し、それが当たり前だと思うようになったのかもしれません。

 社会制度としての結婚になんの疑問も抱かず、単に結婚を幸せなことだと享受し過ごしていたら、世界が急速に変化し、個人の生き方多様化と共に同性愛者などのマイノリティも浮上したことで新しい問いかけを投げかけているのが同性結婚の問題ではないでしょうか。

 単に恋愛結婚の延長線上だけの結婚であれば、同性結婚を認めて然るべきですが、世の中は多くのことを法律によってルール化しており、結婚も例外ではありません。

 

「昭和二十一年憲法 日本国憲法」第二十四条

「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」

②「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」(4)

 日本国憲法には上記のように婚姻について定められおり、「両性」の解釈について議論を尽くしていくことで、同性結婚が可能になる気もしますが、私が問題になると感じるのは②にある「財産権」に関わる法律です。

 また、婚姻に関わる法律には「夫婦」「夫」「妻」という表現が多岐にわたり用いられ、男性と女性を前提にした出産に関わる法律もあります。この辺りの法改正は「同性愛者、トランスジェンダー、性同一性障害」等の方々に配慮した表現と仕組みが必要になり、非常に難しい問題になって来ると思われます。かつては男性と女性しかいなかったものが、後述する性自認や性的趣向も含めればそう簡単な割り切りでは課題解決しないのだという話になります。

 例をあげると、身体が男性として生まれた心が女性の方と、身体も心も女性の方が同性結婚した場合、身体がそのままであれば通常の妊娠が可能ですが、両親は妻と妻という表現になるのか夫と妻という表現にするのかといったところから、それぞれのケースに合わせて非常に多くの表現を必要される可能性があり、性別についてどのような基準で認定するのか?という問題が課題になります。

 

 また、結婚したのち、性自認が変容した場合、いったいどうするのか?一旦話が進むと心の問題に関わる以上、性別の固定は出来なくなるのではないでしょうか?

 そもそも男性と女性という二つの性別のまま話を進めていいのか?など、法律にするとなると全て決めなくてはいけません。

 これらは当事者でないと分からない問題が多くあります。人間の内面に関する問題であって、第三者が証明できる性質のものではない以上、法整備について有識者の意見を聞く段階になった時も、活動家が参加してめちゃくちゃな法律が作られないか?といった問題があります。今現在「LGBT理解増進法案」でSNS上を含めて大きな議論が巻き起こっているのも、当事者と活動家の主張に乖離が見られるのが根本的な原因のように感じています。(注8

 海外では体が男性で心が女性のアスリートが女性の大会に出場し大きな議論を生んでいますが、これも何故こんなことになっちゃったのか疑問しかありませんが、結婚を認めるということは付随して他の分野でも認める話になっていくのを忘れてはいけません。

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谷龍哉

たに りゅうや

谷 龍哉(たに・りゅうや)

1983年生まれ。三重県伊勢市出身。ネット情報アナリストとして、インターネット上の社会事象や問題発生の経緯の情報収集、分析に従事。

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