追い詰められた「高市早苗」 安倍の残党に共通する絶望的な幼さ【適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

追い詰められた「高市早苗」 安倍の残党に共通する絶望的な幼さ【適菜収】

【隔週連載】だから何度も言ったのに 第36回

 

■国家のリーダーが「中2病」である恐ろしさ

「ホモ・ルーデンス」とはラテン語で「遊ぶ人」という意味だ。この「遊び」が文化および人間の知的活動の源泉であると多くの学問領域を横断する形で論じたのがホイジンガである。思想史上の通説では、遊びは文化のなかから出てくるものとされていたが、逆に文化は遊びの中で発生するとホイジンガは唱えた。では「遊び」とは何か。

《たとえば笑いは、真面目のある種の反対ではあるが、遊びとはけっして無条件に結びつかない。遊んでいる子供、フットボール選手、チェスの棋士などは、きわめて深い真面目さのなかにあり、いささかも笑いの気配など現わしたりしないではないか》

 遊びの形式的特徴としては、まずはそれは自由な行為であり、日常生活における「必要」といった概念や「欲望の直接的満足」という過程の外にある。それは定められた時間・空間の中で、一定の法則に従って秩序正しく進行し、場はリズムとハーモニーで満たされている。秘儀や仮想は現実との距離を示す。この遊びの固有性・自立性についてホイジンガはこうまとめる。

《この同種性(遊びがいかなる民族の中でも、同じ観念、形式となって現れているということ)に対する一番もっともらしい解釈は、われわれ人間はつねにより高いものを追い求める存在で、それが現世の名誉や優越であろうと、または地上的なものを超越した勝利であろうと、とにかくわれわれは、そういうものを追求する本性をそなえているが、この本性そのものがその同種性の原因なのだ、ということだろう。そしてそういう努力を実現するために、人間に先天的に与えられている機能、それが遊びなのだ》

    *

 しかし、遊びは劣化した。現代は社会生活一般の問題を覆い隠すために「遊び」という形式が利用されているとホイジンガは言う。それは「偽りの、見せかけの遊び」であると。真の遊びを取り戻すことはできるのか?

    *

 私は最近チェッカーズに憑りつかれている。チェッカーズがブレイクしたのは私が小学生の頃。当時はアイドルグループとして売り出されたので、小学生ながらに「けっ」と思っていたが、それこそ「中2病」である。あらためて聴き直したが、芹澤廣明と売野雅勇のタッグの作品も藤井フミヤ、尚之兄弟、鶴久政治がつくった曲もかなりいい。当然、フミヤの声は国宝級に素晴らしい。日本の歌謡界では群を抜いていた。

    *

 私はとりあえず20曲くらい課題曲を選んで、自宅で聴きこんだ。カラオケのJOYSOUNDではチェッカーズ専用のアカウントを作り、毎日練習をしている。そんなことをしていても1円にもならないが、それでもやらなければならないことはある。まさに《それは自由な行為であり、日常生活における「必要」といった概念や「欲望の直接的満足」という過程の外にある。それは定められた時間・空間の中で、一定の法則に従って秩序正しく進行し、場はリズムとハーモニーで満たされている》

    *

 唄った曲は録音し、自宅に戻ってから音程と譜割をチェックする。正確でないところは音源をループ再生して頭に叩き込む。なかなかハードだが、そこには「真剣さ」がある。先日某所のグラウンドの前を通りかかったら、中学生がサッカーをしていた。そのときハッと気づいた。毎日行く酒場が学校だとしたら、チェッカーズの練習は部活なのではないかと。部員はまだいないが。

 

文:適菜収

KEYWORDS:

✳︎KKベストセラーズ  適菜収の好評最新刊✳︎

『日本をダメにした 新B層の研究』

✳︎

全国書店、Amazonで絶賛発売中

※以下のカバー画像をクリックするとAmazonページにジャンプします

  • 目次

はじめに−−「B層」とは何か?

✳︎

第一章 内田樹と『日本辺境論』

辺境と偏狭

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

B層グルメと某評論家

B層という言葉が出てきた経緯

なぜ日本はこんなことになってしまったのか

ルース・ベネディクトの『菊と刀』

安倍晋三の行動原理

学問のブレイクスルー

マイケル・ポランニーと暗黙知

百人一首を暗記する意味

「型」を知るということの贅沢

 ✳︎

第二章 自立を拒絶する人たち

白井聡の『永続敗戦論』

終戦記念日という欺瞞

冗談は櫻井よしこさん

「サヨク」と「保守」の自己欺瞞

「主権の欲求不満」の解消

 ✳︎

第三章 「正義」を笠に着る人たち

ウクライナ首都の名称変更は「正義」なのか?

「人間は見たいものしか見ない」

社会的リンチというB層の「正義」

人種問題における「正義」の暴走

「ルッキズム」批判は「正義」なのか?

言葉狩りは「正義」なのか?

若年層に選挙権を与えるのは「正義」なのか?

山本太郎と「正義感」について

 ✳︎

第四章 陰謀論に走る人たち 

「無知の知」と「無恥の恥」

不道徳としか言えない果物屋

「維新に殺される」

新型コロナは「バカ発見器」でもあった

ひっくり返って駄々をこねる老人たち

Yahoo!ニュースのコメント欄

知識はあるけど教養がないバカ

デマは言論の自由にあらず

社会の変化は元には戻らない

99%の人が知らない話

✳︎ 

第五章 無責任な人たち

安倍の次は維新に騙されるB層

メディアの劣化が止まらない

大阪都構想のデマと事実隠蔽

総選挙で湧いてきたB層

✳︎ 

第六章 恥知らずな人たち

飼い犬の遠吠え

安倍晋三の本質を映し出す一枚

ツッコミ待ち政治家だらけの国

日本の崩壊に気づいていないB層

日本最大の権力者は「改革バカ」

「ジューシー」発言は外部の拒絶

悪意なく嘘を重ねる人々

カルト化した自民党広報本部

百田尚樹の「歴史改ざんファンタジー」

日本人は悪に屈したネトウヨ用語を使い騒ぎ出した元首相

✳︎ 

おわりに−−人間は過去を忘れ野蛮は繰り返される

 ※上のカバー画像をクリックすればAmazonページにジャンプします

オススメ記事

適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

日本をダメにした新B層の研究
日本をダメにした新B層の研究
  • 適菜収
  • 2022.08.10
思想の免疫力: 賢者はいかにして危機を乗り越えたか
思想の免疫力: 賢者はいかにして危機を乗り越えたか
  • 中野剛志
  • 2021.08.12
日本人は豚になる: 三島由紀夫の予言
日本人は豚になる: 三島由紀夫の予言
  • 適菜 収
  • 2020.11.05