「私たちの声を聞いて」人気声優が切なる願い 「インボイス問題」公開ヒヤリング |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「私たちの声を聞いて」人気声優が切なる願い 「インボイス問題」公開ヒヤリング

 

■個人情報は簡単に抜き取れるというセキュリティの甘さ

 技術者の話では、ある程度プログラミングの知識があれば時間はかかっても数十万件のデータを取り出すことは可能だという。公表サイトは現在登録事業者番号など個人情報がわからないようになっているはずであった。

 しかし技術者からみれば、現在でも容易に個人情報の抜き出しが可能な状態になっている。しかもSNS上でも具体的な個人情報の抜き取り方が投稿され、検証してみたら第三者でも抜き取りができたという。登壇者が検証した方法では、プログラミングを全く知らない素人にレクチャーした後、補助がなくても10分程度で抜き取りができたそうだ。

 これはセキュリティー上、大きな問題があると言わざるを得ない。登壇者からも「ザルではないか」と言われる始末。

「公表サイトが原因で先日福岡で起きたストーカー殺人事件のようなことが起きたらどうするつもりなのか?」と問い詰められるほどのお粗末ぶりなのだ。一括ダウンロードは停止するよう求められたが当然の話だ。

 しかし国税庁の返答は啞然とするものだった。

「一括ダウンロードは、大規模事業者は多数の取引先を抱えているため有用に活用するために必要」

「昨年9月に個人情報がわからないようにしました。復元されたデータは事業者の氏名、住所、事業者番号、任意で登録した屋号(芸名)、事業をする主たる住所だと理解しており、それ以外の個人情報が漏えいしたとは思っていません」

 つまり、国税庁は個人情報の漏えいとは思っておらず、データのダウンロードも大企業のために残しますと宣言したのだ。もし何か事件が起きても責任を取るつもりはないらしい。

 その後、個人で農業を営む女性からは「道の駅がフライング気味で4月からインボイスナンバーの提示を求めてきているが、早期にそういった動きをしてくるということは、助成などの優遇措置があったから、やっているのか?」といった質問があった。

 財務省は小規模事業者に対して「3年間で2割の軽減処置をする」「免税事業者は6年間一定の控除をされる」と壊れたレコードのように繰り返すだけであった。登録が強要されている状態についても「そうした行為がないよう周知徹底します」と従来通りの答えに終始した。さらに個別の事案は答えられないと繰り返すだけ。現実に起きているのに何も対策をするつもりはないらしい。

 他にも議員から相談窓口についてなど様々な問題について指摘されるも財務省、国税庁、公正取引委員会は糠に釘を打つような返答であった。岸田総理の答弁とよく似ている。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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