興味の無い授業も真面目に聞かないとダメですか?【角田陽一郎×加藤昌治】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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興味の無い授業も真面目に聞かないとダメですか?【角田陽一郎×加藤昌治】

あんちょこ通信 第9回


皆さまこんにちは。「あんちょこ通信」編集長のカイノショウです。

あんちょこ通信では、ビジネスパーソンのお悩みを解決する『仕事人生あんちょこ辞典』著者の角田陽一郎、加藤昌治が、みなさまから届いた「仕事人生のお悩み」にパシパシ答えていきます。

お悩み相談は、定期的にYouTubeでも「お悩み”あんちょこ”ライブ相談会」として配信しています。そちらもぜひご覧ください!

さっそくお悩みを紹介しましょう。


 

21歳・男性・学生

「理工系の大学生です。学校に入って2年経ち、目指したい進路ができてきました。できれば興味ある会社に関係ある勉強だけしていたいのですが、カリキュラムはあまり関係ない授業ばかりでモチベーションが湧きません。将来のためにいましておくべきことって何かありますか?」

 

 学生に限らず社会人も、あまり興味のないことはおざなりにしがちですよね。その割に「学生の頃もっと勉強しておけばよかった」と反省する場面は多いわけですが……。

 人に教える機会が多いお二人にとってもよく目にするお悩みだと思いますが、どう解決していますか?

 

■「いつ役立つか」はわからない。けれども「いつか役立つ」はず!

 

角田:ちょうど僕は今期(2022年度前期)、大学の非常勤講師をやっていたんです。これまでにも一回きりの特別授業に招聘されたことは何十回もあったけれど、今年は初めて、「メディア概論」とか「映像ビジネス論」の授業を15回連続で受け持ったんです。

 こうして教える側の立場になると、「この学生さんたち、この分野にすごい興味があるんだな、とかそんなに興味ないんだろうな」というのは分かるね。

 

加藤:ああ、それはそうだろうね。

 

角田:興味がある人相手なら深い話をするんだけど、講義も数回もやっていると「とりあえず単位のために受講してます」という雰囲気が分かってくるわけで、「これ以上深い話をしてもしょうがないんだよな」って思っちゃったんだ。

 この質問者の方は「自分の感心がない授業を受けていてもしょうがない」と感じていて、僕自身若い頃にそう感じたことはあるわけだけど、じつは教えている側も同じ悩みを持っているというのはちょっとした発見だった。

 教師の側も興味を持ってもらえないとヘコむから、逆に言うと授業が面白くなるかどうかは、教師だけでなく学生にもかかっているんだよ。

 

加藤:その話を聞いて、自分が高校生だった頃を思い出した。夏休みだったかな〜に「夏目漱石の『それから』を読んで感想文的なのを書く」という宿題が出たんだけど、結局やらなかったんだよね。

 宿題としてはやらなかったんだけど、提出期限から23ヶ月してから何かの拍子に読み始めたら、これがすごく面白くて止まらない。それで宿題を出した先生に「宿題は出しませんでしたけど、読んでみたらすごく面白かったです」って云いに行ったら、先生が「にまっ」という顔をしたんだよね。

 今になって振り返って勝手にまとめると、結局のところ先生の役割の一つに、「いつ役に立つか分からないけれど、役に立つ確率がそこそこ高いものを提供する」というのがあるってことだと思う。

 だから質問者の方も、「今は役に立たないかもしれないけれど、役に立つかもしれないからちょっとだけ聞いておく」とか、寝るなら寝るでもいいけれどテキストは手元に持っておくとか、興味の無い授業は、そういう後の人生に役立つかもしれないコンテンツへの取っ掛りとして捉えておくといいんじゃないでしょうか。

 

角田:そうだよね。僕は非常勤講師もやってるけど、東大の大学院生として授業を受ける立場でもあるじゃないですか。そうすると、自分の研究とは関係なさそうな授業からも「化学反応」が起こることってあるんだよ。僕はメディア論の分野で修士論文を書いたけれど、例えば「宗教学」の授業で「経典はこうやって成立する」みたいなことを教わると、自分の中でテレビ番組の制作で台本を作ることと重なったりするわけだよね。

 僕たちの『仕事人生あんちょこ辞典』の中でも、「映画を観に行くと、後々自分の仕事のアイデアに結びつくことがある」みたいな話をしているけれど、それと同じだよね。

 

加藤:その化学反応、面白い。でも自分が学生の時には気がつかなかったなぁ。

 

角田:気がつかないよね。僕も、今になって授業に興味を持ってもらえないことを散々嘆いているくせに、若い頃はやっぱり、興味の無い授業は寝てたよ。

 

加藤: いわゆる「アイデアのつくりかた」的な話では、別の分野の知識を自分の分野に結びつけて新しいアイデアを生み出すプロセスは「アナロジー発想」「アナロジー思考」みたいに云われるよね。その意味では、いつ役立つかは分からないけど、役立つ可能性がそれなりに高いものを大学は提供しているはずだよね。

 

■学生を飽きさせないテクニックいろいろ

 

加藤:話を先生の側に移すと、「授業を作るスキル」というものはあるわけだよね。学校の先生方からお話をうかがうと、学生にとって「寝たくない」ないしは「眠ってる場合じゃない」ような授業を先生の側がアレンジして解決できることは多いらしいよ。

 

角田:それはそうだよね。先日敬愛するリベラルアーツ研究家の麻生川静男さんと久しぶりにお話しをした時に、あの方はいろいろな大学で教えてきたから僕にもアドバイスをくれたんだけど、まず「座って教えてちゃだめだ。頻繁に立って、ふらふら歩け」と言われたんだ。

 昔の先生は黒板とかホワイトボードに書いていたけど、今の大学の先生は基本的にスライドで見せるから、座ってパソコンを動かしてるだけなんだよ。でも先生が単純に前を行ったり来たり歩くだけでも学生は目で追うわけだから、それで少し眠気が覚めるんだって。

 もう一つは、例えば高校時代に、地学の先生が鉱物の見本を持ってきてじゅんぐりに回したりしたじゃない。あれも寝させないテクニックなんだって。確かに僕も「これ、『さんまのSUPERからくりTV』の台本だから、授業中適当に回して」ってやるだけで、学生さんたちは寝なかったよね。

 僕は「飽きさせない授業をするには、中身を面白くすればいいのかな」と思ってたんだけど、麻生川先生ほどの方が「歩く」とか「物を渡す」という物理的なやり方で眠気を覚まさせてるというのは、すごく勉強になったよ。

 

加藤:そういうある種のTipsでいえば、他に「参加者が喋る時間を必ず作る」は手としてあるね。「質問」という形で内容に直結したことを喋らせるのもそうだし、セッションのはじめに「昨日●●があった」雑談をしてもらうのもいいんだけどさ。その授業の中でいきなり発言させるにしても、最初に声で発話していないと喋りにくい心理があるから、はじめに関係ないことで声を出してもらうことでその後でも喋りやすくなるんだね。

 ちなみに、こういうTipsをもっと知りたかったら、前田康裕さんの『まんがで知る教師の学び』シリーズがお薦めしちゃう。授業が上手くいかない先生たちのお悩みに答える系の本なんだけど。

 

角田:それ、まさに僕のことじゃないですか。その本、早く読まないと。これまで僕はその手のTipsを軽視するところがあったけれど、やっぱり先人達が残し伝えてきただけの価値があるんだね。

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角田 陽一郎/加藤 昌治

かくた よういちろう かとう まさはる

角田 陽一郎(かくた・よういちろう)

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者 

千葉県出身。千葉県立千葉髙等学校、東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社を設立(取締役 ~2013年)。2016年TBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員(2014、15年)、SBP高校生交流フェア審査員(2017年~)、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院にて文化資源学を研究中。著書に『読書をプロデュース』『最速で身につく世界史』『最速で身につく日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』『人生が変わるすごい地理』『運の技術』『出世のススメ』、小説『AP』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。好きな音楽は、ムーンライダーズ、岡村靖幸、ガガガSP。好きな作家は、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、司馬遼太郎。好きな画家は、サルバドール・ダリ。

                                                             

加藤 昌治(かとう・まさはる)

作家/広告会社勤務

大阪府出身。千葉県立千葉髙等学校卒。1994年大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス、2003年)、『発想法の使い方』(日経文庫、2015年)、『チームで考える「アイデア会議」考具応用編』(CCCメディアハウス、2017年)、『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』(CCCメディアハウス、2017年)、ナビゲーターを務めた『アイデア・バイブル』(ダイヤモンド社、2012年)がある。           

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