グルーバルダイニング判決の本質は「狙い撃ち時短命令」と「政治の曖昧な政策」!?【松野大介】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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グルーバルダイニング判決の本質は「狙い撃ち時短命令」と「政治の曖昧な政策」!?【松野大介】


 新型コロナ改正特別措置法に基づく飲食店への営業時間短縮命令を巡る初の東京地裁判決は、東京都が店舗の感染対策などの「個別の事情」を確認しないまま命令を出した点を「発令の要件を満たしていない」と判断した。

 コロナ報道のあり方などを指摘し続ける元芸人の作家・松野大介氏がわかりやいく、ユニークに解説する!


「ラ・ボエム」「権八」などを展開する飲食チェーン「グローバルダイニング」の社長谷川耕造氏。同社は都の時短命令が営業の自由を保障する憲法に違反するのではないかと提訴に踏み切っていた。損害賠償の請求額は104円だった。

 

 裁判結果はとかく難しく、この件はあらゆる記事にて専門家が述べているので、私はポイントを絞り、わかりやすく語ります。

《狙い撃ちの時短命令》

 今回の裁判初めて知り、わからない人もいるだろうが、自粛のたびに時短させられる飲食店業界のためにグローバルダイニングが代表して東京都を提訴したわけではない。

 都は2021年3月、時短『要請』に応じなかった27店舗に、午後8時以降の営業停止を『命令』した。が、そのうちの26店舗がグローバルダイニングの系列店だった!

 東京都で要請に応じなかった店は2千店舗なのに、命令された27分の26がグローバル。ご存じのようにグローバルはラ・ボエムなど人気店を持つ。グローバル側が言うように「狙い撃ち」だし、私が思うに「見せしめ」だ。すべてをグローバル社だけにせず、1店舗だけ他の会社の店を入れるところが姑息だ。

 するとグローバル社側が「営業の自由を保障した憲法に反する」などとし、都を提訴。都としたら、すんなり命令を聞き入れ、他の飲食店も従うだろうと予測していたのではないか? 

 判決の記事によると、「グローバル社が行っていた換気や消毒といった感染防止対策や、店舗でクラスター(感染者集団)が発生するリスクについて、都側が確認していなかった」「当時、時短営業の要請に応じず夜間営業を続けていた都内の飲食店は約2千店舗に上っており、全体の1%強に過ぎないグローバル社の店舗が「市中の感染リスクを高めていたと認める根拠はない」」との判断。

 グローバルダイニング社長は、会見で「『みんなが我慢しているのだから』という同調圧力がある風潮の中で、裁判所が最後の一線を守った」、弁護士は「実質勝訴」と述べた。

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松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

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