朝ドラ「カムカムエヴリバディ」のオダギリジョーと深津絵里が「どうにもしっくり来ない」理由【宝泉薫】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

朝ドラ「カムカムエヴリバディ」のオダギリジョーと深津絵里が「どうにもしっくり来ない」理由【宝泉薫】

深津絵里さん

 

 ところで「カムカム」第2期において、彼が演じる役と恋に落ち、結婚するヒロインに扮しているのが深津絵里だ。じつはこちらにも最近、こんな記事が飛び出した。「深津絵里を『カムカム』に導いた『不良10代』『母との別れ』『内縁の夫』」(週刊文春)である。

 これによると、地元・大分の中学時代には不良グループに属し、ヤンキーの先輩と付き合ったり、授業をよく抜け出してサボったりしていたらしい。本人が雑誌で告白した「悪ガキの中心」で「出席簿を破ったり、教室のカーテンを切ったり」していたという発言も引用されている。

 気になって検索してみると、ミクシィにこの中学関係者のためのコミュニティがあった。そこには、深津と同時期の在校生らしき人の書き込みで「『深津軍団』とか作ってツッパってたなぁ~。懐かしい~」(投稿されたのは2010年)というものが。とはいえ、デビューするために14才で上京して転校しているので、そんなに本格的なヤンキーでもなかったのだろう。

 ただ、筆者は新人時代の彼女にインタビューした際のことを思い出す。80年代から90年代にかけて、女性アイドル中心に何百人もの芸能人を取材したが、深津の印象は五指に入るほどよくなかった。態度が悪いとかではなく、輝きをまったく感じなかったのだ。会話にも響くものがなかった。やんちゃだった子が清楚路線で成功することは意外と珍しくないものの、この時点ではまだまだキャラを作り込めていなかったのかもしれない。

 それだけに、その後の大成には驚くばかり。「カムカム」でも実年齢より30歳も若い役を演じ、概ね好評だった。しかし、これは最近の風潮もプラスに働いているのだろう。公の場で女性を「若作り」などと言うと、フェミニストみたいな人たちに噛みつかれるので、メディアは忖度もしていると考えられる。

 実際、彼女が褒められる記事のヤフコメではこんな異論も出た。「無理がある」「違和感ありまくり(笑)」「ファーストショットはトラウマになった」などなど。筆者も同意見だ。30歳の年齢差を超えるのは、容易ではない。老け役をやるときもそうだが、何よりも、年相応の身のこなしに限界があるのだ。

 深津ほどではないが、オダギリも20歳くらい若い役で登場。その結果、ふたりが若いカップルを演じた期間は若者世代での視聴率が明らかに低下したことが報じられている。オジサンとオバサンのイチャイチャを見せられても、若者がキュンとしないのは当然だろう。若者ではない筆者なども、物語が進んでふたりの娘が小学生になり、中年の親を演じるようになったときはホッとさせられたものである。

 とまあ、過去の狼藉を平気でさらけだすオダギリが「いいひと」を演じていることにせよ、異例ともいうべきヒロインの若作りにせよ、どうにもしっくりこない。だったら、見なければいいともいわれそうだが、厄介なのはこの朝ドラがいつもと違い、三代百年を描く3部構成であることだ。

 上白石萌音が初代ヒロインを演じた第1期は気に入っていたし、川栄李奈が三代目ヒロインを演じる第3期にも期待が持てる。いくらしっくりこなくても、この第2期を見ておかないとつながらないのだ。

 それでも、今週後半には川栄が登場して、第3期がスタート。頑張って視聴してきた甲斐があったと半年間のドラマの最後に思えることを、楽しみにしている。

 

文:宝泉薫(作家・芸能評論家)

KEYWORDS:

※上のカバー画像をクリックするとAmazonサイトにジャンプします

オススメ記事

宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

平成の死: 追悼は生きる糧
平成の死: 追悼は生きる糧
  • 宝泉 薫
  • 2019.04.28
痩せ姫 生きづらさの果てに
痩せ姫 生きづらさの果てに
  • エフ=宝泉薫
  • 2016.08.26