「イスラームにとってウイグルとは?」「いま文明圏再編の時代とは何か?」【中田考】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「イスラームにとってウイグルとは?」「いま文明圏再編の時代とは何か?」【中田考】

「隣町珈琲」中田考新刊記念&アフガン人道支援チャリティ講演〈質疑応答編〉


アフガニスタンでは今、第二次タリバン政権が発足し始動しているにもかかわらず、国際社会はタリバン政権を国際テロリスト指定し、経済制裁をかけ続けている。食糧危機は深刻さを増し、子どもたちの餓死者が出ているのがアフガニスタンの現状だ。いまベストセラーの『タリバン 復権の真実』(KKベストセラーズ)の著者でイスラーム法学者の中田考氏が、実業家で文筆家の平川克美氏と、平川氏が主催する「隣町珈琲」で対談を行った。「イスラームにとってウイグルとは?」「文明圏の再編の時代とは?」。会場から寄せられた質問に中田考氏が答えた。前回配信した講演記事(前編後編平川氏との対談編)と合わせてお読みください。


2021年2月26日、トルコで行われたウイグル族引き渡し抗議デモ。

 

 

■イスラームにとってウイグルはどのような存在か?

 

質問1:ウイグル問題について、日本で報道から聞こえる限り、ウイグル人はイスラームであることが理由で迫害を受けているにもかかわらず、イスラームの人たちはそれほど動いてないようにしか見えません。

 素朴でナイーブな見方かもしれませんが、何でイスラームの人たちは全然動かないんでしょうか?

 

中田:ウイグル問題に関してはいろいろな要素があります。ひとつひとつ見ていきましょう。

 まず、ウイグル問題は国民国家の問題ですが、イスラームの教えからすると、そもそも国民国家自体がおかしいという話になります。ところがイスラーム諸国からすると、国民国家を批判すると自国政府の批判にもなってしまいますから、そこで強くは出られないことが理由の一つです。

 また、ウイグルは中央アジアから遠いので、なかなか支援できないというのも大きいでしょう。

 さらに、日本にいると分かりにくいんですけれども、弾圧に対して「弾圧がある」と報じられている場所には、実はある程度「報道の自由がある」のです。本当に弾圧がひどいと何も情報が出てこないこともあります。

 その意味では、中国のウイグルでの宗教的な弾圧は確かにかなりひどいんですけれども、我々のように冷戦期の中央アジアの惨状を知っている人間からすると、「まあこんなもんだね」「あんなことで騒いでたら身体がいくつあっても足りないよ」というのが実際の感想です。現在の弾圧と比べても、シリアで起きてることのほうがはるかにひどいですから、「ウイグルを助けよう」という話にはならないのです。 

 またウイグル人自体、多くの人は実はそれほど宗教熱心ではなく、熱心な人たちは独立したいと思っていますけれども、コロナ禍前なら中国からの観光客の通訳とかをやって、多くの人は結構楽しく暮らしていました。ですからイスラーム世界としても、「ウイグルのことは、まあいいか」という意識もあるわけです。 

 

 中国に関して言えば、アメリカやEUが「人権外交」を主張する中で、イスラームの国は皆それに合致しないので西欧からいじめられています。ですからイスラームの国はロシアと中国に近づいているので、中国に対して批判できないところもあります。

 ウイグルからの難民を一番受け入れているのは実はトルコです。トルコは表面的には中国と仲良くしていますが、じつはウイグル人を保護している。だからといって中国を表立って非難してしまうと、今度は今できている保護すらできなくなります。

 この状況はこれからのアフガニスタン政府も同様で、中国から名指しでテロリストとして指名手配されている「東トルキスタンイスラム運動」を取り締まるよう言われていますが、アフガニスタン政府は「我々は中国を攻撃するような組織を許さない」と言う一方で、決して彼らを中国に引き渡しません。

 このように、表面的に見ると何もやってないように見えるけれども、実はそれによって保護できている、という部分もあるのです。

 

次のページアフガニスタンとトルコの深くて長い関係

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中田 考

なかた こう

イスラーム法学者

中田考(なかた・こう)
イスラーム法学者。1960年生まれ。同志社大学客員教授。一神教学際研究センター客員フェロー。83年イスラーム入信。ムスリム名ハサン。灘中学校、灘高等学校卒。早稲田大学政治経済学部中退。東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。カイロ大学大学院哲学科博士課程修了(哲学博士)。クルアーン釈義免状取得、ハナフィー派法学修学免状取得、在サウジアラビア日本国大使館専門調査員、山口大学教育学部助教授、同志社大学神学部教授、日本ムスリム協会理事などを歴任。現在、都内要町のイベントバー「エデン」にて若者の人生相談や最新中東事情、さらには萌え系オタク文学などを講義し、20代の学生から迷える中高年層まで絶大なる支持を得ている。著書に『イスラームの論理』、『イスラーム 生と死と聖戦』、『帝国の復興と啓蒙の未来』、『増補新版 イスラーム法とは何か?』、みんなちがって、みんなダメ 身の程を知る劇薬人生論、『13歳からの世界制服』、『俺の妹がカリフなわけがない!』、『ハサン中田考のマンガでわかるイスラーム入門』など多数。近著の、橋爪大三郎氏との共著『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)がAmazon(中国エリア)売れ筋ランキング第1位(2021.9.20現在)である。

 

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